ライブラリ

コラム

安田雅弘演劇の正しい作り方

【演劇の正しい作り方⑰】筋トレは身体への好奇心(体育としての演劇8)実演編その5/97年2月号

 演劇の正しい作り方17/97年2月号

 身体感覚のためだ。
 といっている。
 柔軟運動や筋力トレーニングをやる理由はおもに「身体感覚」のためである。今回も、その理由からいくつかのトレーニングや稽古の方法をお伝えしていくつもりだ。
 「本当に」
 こんなにやらなくてはいけないのだろうか。という疑問がわいたとして、それは当然かもしれない。
 少々説明しておこう。
 「身体感覚」は、それ自体演技をしていく上で役に立つ、というかそれがなければ演技は成立しないものだとボクは考える。しかしそれはまた、ただその感覚を身につけてしまえばOKというものでもない。自分の「身体」に対するつきることのない好奇心が前提となった「感覚」なのである。
 すぐれた味覚を手に入れさえすれば優秀な料理人になれるのではない。味覚に関する果てしない興味があって初めて料理人という人種は存在するのではないかと思うのだ。
 同じことだといいたい。
 自分の身体に、大きくいえば人間の身体のありように、さらに大きくいえば人間の存在そのものに好奇心が持てなければ演劇人はつとまらない。
 とボクは思っている。
 好奇心の延長上であれば、どんな筋力トレーニングも有効になっていくはずだ。
 どんどんいこう。
 今回は一人でやりやすいメニューを考えてみた。

 注意4つ。
◎ちょっとムリする
◎できるだけ毎日やる
◎息を止めない
◎ストレッチをする

■逆立ち(上半身~腰)
☆壁を使って、壁がなければパートナーに持ってもらう。逆立ちが習慣化すると、内臓が鍛えられ、乗り物酔いもなくなる。はじめは30秒程度。1分、2分と伸ばしていく。
壁にはかかとしかつかないように。持つ場合はパートナーの足首をもってやる。
目は床についた手を見る。ひじは決して曲げない。さもないと頭から落ちる可能性あり、注意!

※逆立ちのストレッチ
前屈 … 立ったまま前屈して腰をのばす。
肩回し … 右腕を前回し、左腕を後ろ回しに肩を回転させる。
[check!]左右逆でもやる。左右ともに前回し、後ろ回しでもむろん構わない。

■腹筋
□腹筋1・カウント
☆両手を頭の後ろで組み、あお向けになって、両手をまっすぐそろえて10センチほどあげ、止めて「いち、に、さん」と3カウント。
「いち、に、さん、し、ご」と5カウントしながらゆっくり足を垂直にあげる。ひざは曲げてよい。
垂直になったところでひざをのばし3カウント止める。
ひざを曲げないようにまた5カウントしながら足をゆっくりとおろし、地面から10センチのところで止める。
これを5回~20回程度繰り返す。
[check!]きつくなるとひざが曲がりやすくなるので、止めるところではひざをのばすようにこころがける。

□腹筋2・肩甲骨あげ
☆両手を頭の後ろで組み、両手を開いてひざをまげ、あおむけになる。
息を吐きながら上体を肩甲骨が地面からはなれるところまであげる。
息を吸いながら戻る。比較的らくな腹筋なので、20回~100回程度繰り返す。

□腹筋3・静止
☆腕組して、両足をあげ、静止する。ひざは曲げてものばしてもよい。30秒~3分程度止める。

※腹筋のストレッチ(演劇の正しい作り方⑯ 参照)

■背筋
□背筋1・カウント
☆両手両足を開いてうつぶせになる。
息を吸ってから10かぞえつつ、ゆっくりと両手両足をあげてゆき、10で一番高いところにもってくる。
息を吐きながらもとに戻る。2回~5回繰り返す。
[check!]10カウントの中で均等にあげきる。ムラがないようにこころがける。

□背筋2・シーソー
☆両手両足を開いてうつぶせになり、まず両手をあげて、両足をさげる。
その勢いで逆に両足をあげ両手をさげる。
反動を利用して手足のあげ幅を大きくしてゆく。
10回程度おこなう。

□背筋3・ジャンプ
☆うつぶせになって両足首を両手でつかみ、つかんだ両手を一瞬でできるだけ高いところに持っていくように吊り上げジャンプする。
5回~10回程度おこなう。

※背筋のストレッチ(演劇の正しい作り方⑯ 参照)

■腕立て伏せ
□通常の腕立て伏せ
☆手は肩幅。まっすぐついて、ひじを上体につけると上腕が鍛えられる。
ハの字について、ひじを上体から離すと胸が鍛えられる。
両手を広めにつくのも効果的。
[check!]腰が上下しやすいので、身体をまっすぐになるようにこころがける。腕立て伏せをする場合、おでこではなくあごが地面につくようにする。

□腕立て女性バージョン
☆腕力がない場合は、ひざを地面につけるとやりやすい。

※腕立て伏せのストレッチ
肩・腕をのばす … 四つん這いからのばす方の肩を地面につけ、ついてない方の腕をのばしてからだの後ろの方にもっていく。のびるのは地面についた方ではなく、この後ろに持っていった方の肩と腕。
肩回し … 逆立ちのストレッチ 参照
肩・腕をのばす … 演劇の正しい作り方⑭ 参照

「演劇ぶっく」誌 1997年2月号 掲載

コラム一覧へ