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安田雅弘演劇の正しい作り方

【演劇の正しい作り方㉔】ワイワイげらげら(体育としての演劇13)/98年4月号

 演劇の正しい作り方24/98年4月号

 幸いなことに、ボクらが身を置く演劇業界は、演劇が好きで、かつそれを一生懸命にやっている人であふれている。
 ところが、その演劇が好きで一生懸命やっている人たちが演劇に没頭しようと思った時に、それにふさわしい環境が用意されているかというと、ほとんどないように思われる。
 スポーツマンならどうだろうか、あるいは科学者なら、弁護士ならどうか。
 そう考えるとちょっとさびしい。
 没頭しようと思った時に環境が用意されていないのは、社会がそうした才能を必要としていないし、敬意を払っていないということになりはしないか。
 これはおかしい。演劇は没頭にふさわしい何ものかである。環境がないのであれば、それは社会の方が間違っている。用意はないが、ボクらにもし、対決する必要があるとすればそういうありさまや価値観に対してであろう。他の人がボクらの代わりにこれは変だと言ってくれるわけではないのだから。
 ただ、いま没頭中の人には何の責任もない。その人たちはまさしく没頭中なのであって、周りのことに目をやる必然性を感じていないから「没頭」なのだ。つまりその対決は、ボクら演劇に「専念」しているものが取り組むべき課題なのだろう。
 没頭の時期、幸いボクはある環境を得られた。特別な環境ではない。自分たちの工夫しか武器がないという点では日本全国どの地域にも共通した環境と言える。そして、その時期に身体に意識をおくことを学べたことが自分にとって最大の財産になったと今になれば思う。
 身体が思い通りにならないことを徹底して確認した時期。といってそれは重苦しい作業ではなく、底抜けに楽しかったことをおぼえている。何ほどのこともない、今まで紹介したようなトレーニングや、今回のような遊びともつかないトレーニングを仲間と持ちよっては、新しい組み合わせや改造を、飽きもせず繰り返していた。役に立つかどうかが重要ではなく、楽しいかどうかがもっとも大切なことだった。でなければ人一倍怠け者で飽きっぽい連中の集まりなのだ、続くはずがない。それは今でも全く同じで、こんなこと生真面目にやってはいけない。いかにワイワイげらげらやれるか、その一点にこそ工夫が求められるのだと思う。
 結論をいおう。
 没頭にふさわしい環境はない。まだ。
 とりあえずそれは、創意工夫ででっちあげるしかない。楽しくやったものの勝ちである。

左右不対称な動き

■肩の動き
両肩を不対称に動かす。

準備として、まず片肩ずつ動かしてみる。
左肩を2拍子で動かす。①で、左腕を上。②で下。
右肩を3拍子で動かす。①で、右腕を上。②で、横。③で下。

この2つを合わせてみる。
左肩を2拍子、右肩を3拍子で動かす。
①で、両腕を頭の上に。
②で、左腕を下に、右腕を横に。
③で、再び左腕を上に、右腕を下に。
④で、左腕を下に、右腕を上に。
⑤で、左腕を上に、右腕を横に。
⑥で、両腕を下に。これで一回り。
これを繰り返す。

[check!]はじめはゆっくりとでいいから、確実にやること。腕は曲げないようにする。左右入れ替えてやってみる。

上下不対称な動き

■ジャンプを取り入れた動き
上半身を2拍子、下半身を3拍子で動かしてみる。

はじめに上半身の2拍子から。
①で、頭の上で手を叩く。②で、両腕で体側を叩く。

次に下半身の3拍子。
①で、両足を左右に開いてジャンプ。②、③は足を閉じてジャンプ。

以上を同時におこなう。
①で、頭の上で手を叩きながら、両足を開いてジャンプ。
②で、両腕は体側を叩きつつ、足は閉じてジャンプ。
③で、頭の上で手を叩きながら、足は閉じてジャンプ。
④で、体側を叩きつつ、足を開き、
⑤で、手を叩いて、足を閉じ、
⑥で、体側、開脚。
これで一回り、繰り返す。

[check!]上半身を3拍子、下半身を2拍子で動かしてもよい。その場合、上半身は①で頭上で手を叩き、②、③で体側を叩く。下半身は、交互に開閉する。こうした違う拍子の動きを「②-③」と呼んでいるが、工夫すれば「③-④」「②-④」など、いくらでも複雑にできる。

「演劇ぶっく」誌 1998年4月号 掲載

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