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海外公演ツアーリポート

「オイディプス王」ルーマニア・ハンガリーツアーレポート

昨年に引き続き、当劇団では本年5月末から6月初旬にかけて、ヨーロッパ・ツアーを行ないました。作品は当劇団の代表作である、ギリシア悲劇「オイディプス王」(原作:ソフォクレス 構成・演出:安田雅弘)です。まず世界三大演劇祭の一つといわれるルーマニアのシビウ国際演劇祭に参加。つぎにハンガリー国内の最大の演劇祭であるペーチ演劇祭に海外劇団としては唯一の招聘劇団として参加し、大きな成果をあげることができました。

■シビウ国際演劇祭
昨年の参加作品「タイタス・アンドロニカス」(原作:シェイクスピア 構成・演出:安田雅弘)は、ルーマニアで大きな影響力を持つ元ソルボンヌ大学教授で演劇評論家であるジョルジュ・バニュ氏より、フェスティバル最高の作品であったとの賛辞をいただきました。
公演日…2010年5月30日
会場…ラドゥ・スタンカ劇場
客席…250席、満員(立ち見客多数)
演劇祭の特徴…イギリスのエディンバラ演劇祭、フランスのアヴィニョン演劇祭につぐ、東欧圏最大の国際演劇祭。今年17回目。先進的、前衛的な演劇表現を標榜するラドゥ・スタンカ劇場が主催する。演劇にとどまらず、大道芸、人形劇、ダンスなど幅広い作品がエントリーされる。参加する上での審査が厳しいことでも有名。2年前に平成中村座が参加。今年は青年団、MODE、鳥の劇場などが参加。

2年連続、メイン会場であるラドゥ・スタンカ劇場での公演を実現。
・2年連続の招聘は異例のことです。しかも、メインの会場での公演は、1日1公演であることを考えると、10作品に限られます。フェスティバルの大きな期待を感じました。
・終演後、客席はスタンディング・オベーション、4回におよぶカーテンコールをいただきました。

公演翌日の大きな反応。
・翌日午前中に開かれた記者会見で、フェスティバル・ディレクターのコンスタンティン・キリアック氏が公演を激賞。記者・評論家席からも、賛辞と質問が多数寄せられました。
・「なぜ『オイディプス王』をやったのか?」「なぜ女優に演じさせたのか?」「《四畳半》とはどのような演技スタイルなのか? 誰が考えているのか? あのような声がどうして出るのか?」と、興味は尽きないようでした。
・今年もルーマニアテレビが公演全編を撮影し、放映予定。
・記者会見ののち、主宰・安田にルーマニアテレビが単独インタビュー(今秋放映予定)。そこでも記者会見と同じような質問がありました。
・午後からは、ロンドンにあるリース大学教授ノエル氏によるシンポジウムに単独ゲストとして出席。会場には、昨晩の「オイディプス王」を見て、興味を持った多くの聴衆が集まりました。ここでも記者会見で出たような質問が多く飛び出しました。その模様は、英国で出版される演劇関係の雑誌に掲載される予定です。

主宰・安田にルーマニアでの演出要請。
・フェスティバル・ディレクターでありラドゥ・スタンカ劇場の芸術監督であるコンスタンティン・キリアック氏より、昨年と今年の実績を踏まえて、安田に新作製作の依頼がありました。ラドゥ・スタンカ劇場の俳優を使い、山の手事情社の演技様式である《四畳半》を用いた新作の演出要請です。
・詳細は、今秋発表される見通しです。

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■ペーチ演劇祭
公演日…2010年6月3日
会場…ペーチ第三劇場
客席…250席、満員
演劇祭の特徴…ハンガリー第四の都市ペーチで毎年開かれている国内最大の演劇フェスティバル。今年10回目。国内全土から選ばれたカンパニーが10日間の期間中、市内にある複数の劇場で公演を行ない、最優秀作品賞や男優・女優賞などを決めるコンペティション形式。付随してフリンジ公演も行なわれる。

海外カンパニーとしては唯一の招聘。
・国内演劇祭ということで、海外カンパニーの公演は例年ほとんど行なわれていないものの、昨年のシビウでの評判を聞いた実行委員会から、今年唯一のゲストカンパニーとして招聘されました。

満員の客席と、5回におよぶカーテンコール。
・ルーマニアと違い、ハンガリーの観客はスタンディング・オベーションをしません。日本人に似ていると言ってもいいかもしれません。代わりに拍手をそろえることでカーテンコールを求めます。終演後に多くの観客から祝辞と賛辞をいただきました。

演劇祭参加作品を観劇。
・2日間のフェスティバル期間中、ツアーメンバーは各所の会場で行なわれているハイレベルな公演を堪能することができました。ブダペストの劇団による「アルトロ・ウィの興隆」(ブレヒト)、「検察官」(ゴーゴリ)などです。

・他の演劇祭、ブダペスト公演を強く推奨される。
観劇した評論家、プロデューサーから、ヨーロッパの他の演劇祭、ならびにブダペストでの公演を強く勧められました。

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