稽古場日誌

燦燦と淡淡と研修生 川村 岳 2016/03/01

斉木という漢(おとこ)

今回、演出助手として修了公演の稽古についています。
演出の斉木が作品のコンセプトを考え、それを舞台上に具現化するのを手伝うのが私の仕事です。

斉木は多くを語らない男だ。
付き合いは長いが未だにプライベートの事はよく知らない。
挨拶もロクにしない。笑顔はほぼ無い。愛想もまるで無い。感情があるのかわからない。

先日久しぶりに稽古に合流したら、斉木が愛想良くニコニコしながら近づいて来た。
どうやら煮詰まっていたらしく、助け舟を求めていたようだ。
そして疲れている? と尋ねると
「いや〜めっちゃ疲れています・・・」
と首を垂れてしばらく動かなくなった。

よし、斉木が追い詰められている。
感情が滲み出ている、ダダ漏れだ。

そんな斉木を知ってか知らずか研修生達にも余裕がなくなってきた。
皆気が付けば虚ろな目で壁に向かってプツプツ練習している。

修了公演は本番数日前が本当の勝負だ。
斉木が倒れるのが先か、研修生が倒れるのが先か。
マラソンで言えばこれからゴールへ続く心臓破りの坂だ。
研修生よ。心臓が潰れても良い。登れ登れ走れ走れ。

研修生を押しのけ、我先にとゴールに着いた斉木がゴールテープを持って待っているぞ。

ただし絶対に切れない鋼鉄のテープを持って。
斉木はそういう男なのだ、と思う。

川村岳

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2015年度研修プログラム修了公演「燦燦と淡淡と」
日程=2016年3月10日(木)〜13日(日)
会場=シアターノルン
詳細はこちらをご覧ください。

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