稽古場日誌

その他 河合 達也 2016/06/22

キャンドルナイトを終えて

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こんにちは。
演出部の河合達也です。

去る6月11日、池上本門寺にて「100万人のキャンドルナイト」というエコイベントが行われました。 階段や境内各所に手作りのキャンドルを並べて、その明かりだけであまり電気を使わない夜を過ごそう、というイベントです。
そのイベントを盛り上げるためのパフォーマンスとして、迫力のある和太鼓や荘厳な雅楽の演奏と共に、僕らは「幸福の王子」という童話を、本門寺境内の一角で公演することになりました。

上演作品が決まったのは本番の約一か月前。「幸福の王子」の稽古に当てられる日数はわずかしかありませんでした。その中で、動くはずのない像や空を飛ぶ鳥を、人の身体で表現するという非常にハードルの高い企画になりました。
僕を含めて四人で幸福の王子の像を演じることになり、日々、像の身体ってどうなっているのだろう、どんな声が出るのだろうかということを話し合いました。「宝石や金で覆われた像がただの鉛の像になる代わりに愛を知る」という、不思議な、温かい心情を想像して、少しずつ僕らなりの幸福の王子の像を創造していきました。
難しかったのは、幸福の王子の捉え方が四人それぞれ違って、「ツバメのことを無視して自分の要望ばかり押し付けて、本当は冷たい人じゃないの?」とか「自分の目や皮膚を剥がして、痛みを堪えながら人々に配るんだから、やっぱり温かい人だよ」とか色々な捉え方がでてきました。それでいて動くはずのない像がどうやって感情表現するのかが難しく、短い稽古期間のなかで最後まで悩み続けました。

公演当日、辺りは段々と暗くなりキャンドルの明かりが灯るなか、手作りで照明をセットしました。実は劇場だと舞台の頭上にバトンという照明機器をつるすパイプがあるのですが、上演会場の日朝堂前は野外のため照明を吊るせず、電源を引くこともできませんでした。そこでスマートフォンのライトや、ペンライトを施設の各所に括り付けて、手作りで明かりを作りました。
準備が終わるころには何重にも人だかりができるほど人が集まってきました。普段は見慣れないお芝居を楽しんで貰えるだろうか、という不安はありましたが、多くの方に最後まで集中して見て頂けたようです。劇場の公演での拍手とは違う、距離の近い拍手を頂くことができました。童話ということもあり、大人も子供も、中には外国の方にも楽しんで貰えたようです。
僕個人も数年ぶりの出演ということで、人前に立つ不安や恐怖はありましたが、自然に囲まれて、手作りの照明の中で楽しく演じることができました。

来年もまたこのような企画を盛り上げていけるように、日々稽古に励んでまいりたいと思います。
見に来て下さった皆様、イベントの関係者様、企画に関わった皆様、本当にありがとうございました。

河合達也

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