稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 鹿沼 玲奈 2016/12/10

さよなら、伯父さん。

作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
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親戚の大勢あつまる新年会、法事、なにがしかの行事、そのつど多くの大人に言われてきたものです。
「玲奈ちゃんも、いつか立派な先生になるんだね」
公務員の一家に生まれたわたしは、高校を卒業するまで、立派な【先生】になることが人生の目標であり、それこそが正義でした。
両親はそれを見て誇りに感じてくれるはずと思っていましたし、わたしは自分の存在を認められることを強く望んでいました。
そうやってわたしは片田舎の小さな世界で、【先生】という仕事のラベルのみを追い求め、いつのまにか将来を決定していました。 言う通りにしていれば、甘いお菓子が手に入るという考えでした。

それを「神託」と気づいたのは、ずっと後。
わたしの本当にやりたいことって何だろう。
そうか、公務員なんかじゃない。
反抗期のなかった少女時代。
高校3年生の8月に「わたしは音大にいくんだ」と叫んだわたしをみて、なんだか両親はホッとしていました(ように見えました)。

神託からはなかなか逃れられません。
いまも、逃れられません。
思考の出発点が、凝り固まってしまっています。
①誰かに誇りに思ってもらえるような存在になるべきだ。
②人に認められる存在になるには何をするべきなんだろう。
・・・そんなことばっかり考えてしまいます。
何も入っていない瓶のようです。ラベルしかなくて、中身は空っぽです。

いつか、みんなに嫌われてもいいから、誰にも認められなくていいから、自分の好きなように好きなことが出来る人間になってみたいです。
わたしにはまだ、神託から完璧に逃げきる勇気はないよなあと思います。
とっても怖いし・・・
ちょっと難しいよなあと、常々思います。

でもとりあえず、ここまでやってこれました。
ちょっとずつ、ちょっとずつ、後ずさりしていこうと思います。
のんびりやりたいなあと、思います。

思う通りにいかない女になっちゃって、ごめんね、さよなら、伯父さんたち。

鹿沼玲奈
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若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
公演情報はこちら
Oedipus@Tokyo_omote

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