稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 鯉渕 翼 2016/12/30

しましょう

作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
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いつも明るく元気に過ごしましょう。
挨拶は元気にしましょう。
友達とは仲良く助け合いながら過ごしましょう。
質問には積極的に答えましょう。
先生の言うことはよく聞きましょう。

学生時代、言葉は少しずつ違ってもこんなことが小学校からいつも教室に掲示されていた。
“神託”について今回考えたとき、あの掲示されていた文章がもう社会の中で円滑に過ごすための“神託”だったのかなと思う。
しましょうしましょうしましょう。
言葉尻は優しくてもこの今まで聞いてきた、そして今も増え続ける「しましょう」はどうしようもなく自分を縛り付けてくる。

愛想よくしましょう。
意見ははっきりと簡潔に述べましょう。
お洒落をしましょう。
お行儀良くしましょう。
他人に優しく自分に厳しくしましょう。
そうすれば社会の中で円滑に過ごせるでしょう。

思い込みのようなものだと思っていましたが、会話に、物語に、教えに、姿かたちを変えて神託は確実に自分にまとわりつき縛り付けてくる。
思い込みとはつまり“神託”に取り付かれている状態なのではないか。

しましょうしましょうしましょう。

まったくどうにかなってしまいそうだ。
何をしても話しても考えていても、ああしましょうこうしましょうと声がする。
社会の中で円滑に過ごすための“神託”。
世の中に浸透しすぎてそれこそが社会になっている。

休まず働きましょう。
我慢しましょう。
痩せましょう。
従いましょう。

“神託”にとらわれた人だらけになっている。
何とか抗えないだろうか。
ああ、そうすると反社会的ってやつになってしまうのか。
嫌だなあ。

鯉渕 翼

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若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
公演情報はこちら

Oedipus@Tokyo

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