稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 髙橋 真理 2017/02/16

イナカモノ

私はいわゆる都会っ子である。
生まれは愛知県だが、小学生になるときに東京へ引っ越してきた。
それからはずっと東京育ちである。
しかし、私は東京が大嫌いである。
人は多いし、車も多い。満員電車なんか愚の極みである。空気は汚いし、朝の渋谷の臭さったら言いようがない、と、東京の嫌いなところをあげたらキリがない。
老後は絶対、東京を出ると決めている。

だが、上京してきた人間や修学旅行に来て楽しそうな学生たちを見るとこう思う。
「イナカモノ」。

何故だかは分からないが、この言葉が浮かぶと同時にとてつもなく東京で育った自分に優越感を感じてしまう。
前述した通り、私は東京が大嫌いである。が、この湧 き上がってくる感情は一体なんなのだろうか。
例えば、地方出身の劇団員の先輩のセリフが訛って、演出家からダメ出しされている姿を見たとき、優越感を感じる。

また隣の県である千葉県、埼玉県、神奈川県の人間が、東京を同じ関東の仲間だと思ってることに関しては本当に納得がいかない。遺憾の意を表したいくらいである。(大阪が東京をライバル視することについてもである。)

とにかく、私は他県から来た人間を見ると、とてつもなく東京バンザイな人間になってしまうのである。
東京が大嫌いで、別に生まれ故郷でもないのにである。

ここで皆さんにネタバラシである。

私もイナカモノです。

私が育ったのは東京だ、というのは噓ではないが、育った場所は小金井市。
ここで、別の東京出身の人間からは、「お前がイナカモノじゃねえか!!」という激しいツッコミをもらうと思われる。

小金井市の誇れ るところは圧倒的な緑の量と、駅前にできた大きなイトーヨーカドーくらいである。
ゴミ処理場はなく、特急も止まらないし、唯一の観光スポットは江戸東京建物園くらいである。
そして都心より、さっき仲間ではないと言った隣の県の埼玉県や神奈川県のほうが近いくらいである。

だから私は住んでる場所を聞かれたとき、府中市と偽ることがよくある。
東京競馬場があり、大国魂神社で有名の府中市である。かなり裕福な市である。
府中市出身の友人と話をするときに、府中市と小金井市を絡めて話すと「いやいや小金井と一緒にするのやめてくれない?」と言われることがよくある。とても腹立たしいのである。

私は東京のイナカ育ちのイナカモノなのである。
つまり、他県出身の人間を見下してしまうのは同族嫌悪以外何ものでもないのである。
胸を張って大都会東京育ちと言いたいが言えない。ヘタに東京育ちであることが私を苦しめているのである。

だから、私は、東京が大嫌いである。

髙橋真理

==============

質問@Tokyo 

「オイディプス@Tokyo」に因んで、出演者同士による“東京”に関する質問コーナーです!
佐々木 啓→髙橋真理への質問です。
IMG_0244
あと一週間で死ぬとしたら東京でなにをしたいか? (佐々木)
死ぬなら大自然の中で死にたいのでとりあえず奥多摩で一週間過ごす。(髙橋)

次回は、髙橋真理→武藤知佳への質問です。

稽古場日誌一覧へ