稽古場日誌

ワークショップ外部活動 小笠原くみこ 2017/03/13

大田区文化振興協会との三カ年プロジェクト~区民劇『仮名手本忠臣蔵』に向けて~

演出部の小笠原です。

唐突な話から失礼いたします。
元々私は水戸市にある水戸芸術館で開催された「水戸野外劇」に出演したことがきっかけとなり、山の手事情社に入団いたしました。
入団してから知るのですが、山の手事情社がバックアップし素人のお芝居を上演したのは、これが最初でした。
その後、他の地域でも市民劇を開催する機会をいただき、私もスタッフとしていくつかのプロジェクトに関わることになりました。

全く演劇と接点がなかった人生から一変し、演劇中心の生活になるわけですが、山の手事情社の本拠地・東京で、こうした企画に関わることがありそうでない状況のまま、早20年あまり。
私が演劇に出会って、知らなかった世界や魅力的な人間を知ることができ、きっと知らないで人生を歩んだら損をしていたんじゃないか、おこがましいのは承知の上で、演劇を知らない人にぜひ演劇に触れて欲しい! 東京でも、こうした企画ができないかとずっと思っておりました。

そして。
ついに、開催の道筋が見えてきましたので、ここにご報告させていただきます。

今年度から、大田区文化振興協会と山の手事情社がタッグを組み、三カ年の計画がスタートしました。
三年目の2018年には『仮名手本忠臣蔵』を題材にし、区民劇の上演を目指しています。

一年目は第1弾として、今年1月に「下丸子[演劇]ミニミニふぇすた」を開催しました。
ワークショップ発表会と山の手事情社「mini jam」の2本立て公演。
130人を超えるお客様にご来場いただき、大好評のうちに終了しました。
このワークショップは、すでに何度かこの稽古場日誌等で紹介しましたように、台本を使わず、身近な出来事を題材にして参加者自身が創作した寸劇がメインプログラムでした。その中から選りすぐりの作品を集め、発表会を行ないました。
「mini jam」は劇団の稽古方法《山の手メソッド》を公演形式で紹介する作品です。
たくさんの方に、演劇をもっと身近に感じていただきたく、実施しました。

三年も時間をかけるのに、なぜ台本を使わないワークショップからスタートしたのか。
それは「台詞を言う」ことが、とても難しいからなのです。
「台詞を口に出す」だけでは「役」にならないからなのです。
(そのことについて、倉品淳子がとてもわかりやすく記しています。ぜひお読みください。https://www.yamanote-j.org/journal/6394.html )

素人の区民劇だとしても、演劇の醍醐味である自分ではない何者かになる作業を真剣に取り組むため、あえて「自分の言葉やその裏にある感覚を再認識する」ことから始めよう、という狙いだったのです。
寸劇創作の過程は、出されたお題をどう捉えてどんなドラマを提案するのか、その世界と自分の生活は近いのか遠いのか、飛び込んでいけるのか、自分は何を面白いと思っているのかを、いやでも考えざるを得ず心の中をさらけ出すことも必要になり、思いもよらない欲望や捉え方に参加者自身も驚いたりといった体験になったことと思います。
その体験が「台詞を言う」取り組みになったとき、とても大事なことだと私たちは考えています。

そして、まもなく、二年目の第2弾の企画がスタートします。
まずは、演劇って色んな種類があることや、『仮名手本忠臣蔵』の魅力について知ろう! というころから始まります。
見て聞いて楽しい、堅苦しくない勉強会といったところでしょうか。
もちろん、今年度の参加者だけではなく、たくさんの方にご参加いただけます。
「やっぱり演じる側になるのはちょっと……。でも興味がある」という方でも、大丈夫です。
(詳細は間もなく告知いたしますので、ぜひチェックしてください)

『仮名手本忠臣蔵』をお目にかけることができる日まで、ぜひ応援をよろしくお願いいたします。

小笠原くみこ

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