稽古場日誌

研修生研修生(体験談) 鹿沼 玲奈 2017/04/08

年間ワークショップ参加者の体験談/鹿沼玲奈

私はもともとミュージカルの劇団に所属していました。
ミュージカルの俳優になることを夢見て地方から上京してきたので、その願いが叶い、プロとしてお金をもらう日常を送れることに幸せを感じていましたし、誰でも叶えられるわけではない夢を叶えたというプライドもありました。その反面、その生活に不満をもち、嫌気が差し、果ては俳優をやめてしまおうかというところまで追い込まれていました。
なぜかというと、自分のやっている演技、といわず、歌や踊り、舞台表現の何一つとして自信が持てないからでした。
私は大学のミュージカル科を卒業してそのまま就職したのですが、特に演技についてはなにひとつ教えてもらったことはなかったという感触でした。(いまの講師の方がどうかはわかりませんし、大学生の自分にあまりに感受性がなかったために講師の方々のアドバイスをうまく取り込めなかったということなのかもしれませんが)
呼吸法も発声法もなにひとつ武器として持っていないのに、立ち振る舞いの作法ひとつ身についていないのに、お客様からお金を頂戴している状況に矛盾を抱きつつ、それでも日々のステージはあるわけで、グルグルと暗い渦のなかで過ごしているようでした。
結局はその劇団を退団し、そしてこの研修生に籍を置いたわけですが、そこで明確になったのは「やっぱり私は俳優としてなにひとつ満足にできていなかったのだ」という事実でした。
このワークショップのいいところは、プロの山の手事情社の劇団員の方々と非常に近しいところで稽古が行われ、その直接の意見が聞けることだと思います。
そして、その意見は非常に辛らつで、非常に具体的です。
「お前はこんな技術で俳優としてやっていていいと思っているのか」
「いや、だめだよ」
そんな風に、はっきりと自分の無力さを気づかせてくれるような『俳優』に囲まれます。
山の手事情社の研修期間の厳しさは、フィジカル面としてでもそうですが、実はこの事実に向き合うメンタル面が8割がたです。
自分の存在をいちから振り返り、考えなおし、そして演技の技術を向上させることができる、若い俳優の修行の場なのだと思います。お前は今後、本当にプロの俳優としてやっていくつもりなのかと。
私のような境遇の若手俳優さんは、ほかにもいるんじゃないかなあと思います。
鬱屈している若手俳優さんには、ぜひ経験していただきたい1年です。(もちろん若手でなくても)
そして、手にすることができた確かな気合を持ってして、胸を張って俳優をやっていってほしいなと思います。
こんなに厳しい1年間はほかでは味わえないと思います。
今の現状に満足できない、「プロ」の俳優さん、私は特にそんな方々にこの1年間を味わってほしいのです。

2014年度研修生
鹿沼玲奈

稽古場日誌一覧へ