稽古場日誌

ワークショップ外部活動 大久保 美智子 2017/09/06

LOOP⑩創作ワークショップ発表会「夏の夜の夢」リポート

大久保です。7月末に岡山でWS&発表会をしてきました。7/22に岡山入りし、7/30に発表会でした。全7回のワークショップ。地元の方々と「夏の夜の夢」を30分ほどで上演、という企画でした。

「夏の夜の夢」。W.シェイクスピアが書いた喜劇です。貴族と職人、若い恋人たちと倦怠期の夫婦、妖精と人間、昼と夜、覚醒と眠り…などなど、この世を構成する「陰と陽」が捻りながら関係を結んでいます。このスケール感は何なんだ?! その天才に呆れる戯曲です。

たったの7回の稽古、平日は夜の2、3時間しかできません。さらに年齢も演劇のキャリアも全く違うメンバーです。セリフを覚えてシーンを稽古して、というのは難しい。だとしたら、エチュードです。即興でシーンを立ち上げます。みなさんの日常から出てくるネタを拾って、強引に「夏の夜の夢」にこじつける、いわば「こじつけ力」が試される現場でした。
特に妖精や職人のパートが難しく。どんな演出家でも同じように苦戦する場面だと思うのですが、妖精って普通にやったらギャグになってしまいます。しかしその一見子どもじみたセリフの底を見れば、今を生きる私たちの日常に通じるところがある。私たちの日常から「夏の夜の夢」へと繋がるへその緒を探っていきました。

エチュードを重ねていくうちに分かってくるメンバーの人となり。最初は大人しかったのに「枕で他人を叩いてみて」とお題を出すと、イキイキと叩き出す女の子。また、なかなか本気で叩けない男性。結婚経験が無いのに楽しそうに倦怠期の夫婦を演じだす男女。
確かにさっき即興で自分で言った言葉なのに「それをもう一回やって」と言うとできなくなったり。なぜできなくなるんだろう? なぜここでイキイキできてあそこだとできないんだろう、なぜなぜ…??? 渦巻く疑問、迫ってくる時間。答えは出なくてもやるしかありません。追い詰まるとこれまた見えてくる人の違った一面。人のせいにしたり、自分が悪いんだと落ち込んだり。演劇の作業はクールとは程遠いなぁ泥臭いわ…といつも思います。ものを産み出す現場というのは、全てそうなのかも知れません。

そうしてできた岡山版「夏の夜の夢」。ちょうど夏祭りの少し前だった岡山で、現実と夢が交錯する不思議なお芝居ができたのではないかと思います。「夏の夜の夢」のセリフはほとんど使っていませんが「確かに夏の夜の夢だ」と感じていただけたとしたら、嬉しいです。

メンバーのみなさん、主催のloop⑩さん、本番に来てくださったみなさん、ありがとうございました。
この地で11月は「班女」を上演します。楽しみです!

大久保美智子

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