稽古場日誌

傾城反魂香 武藤 知佳 2017/09/25

憧れの『傾城反魂香』

私は山の手事情社の研修生になる時、あまり大きな声では言えないのですが、この劇団のことをほとんど知らない状態でした。
仕事やプライベート、いろんなことにモヤモヤしていた時期で、
(これから人生どうしよう?)
(演劇したい)
(とりあえず、体験してみよう)
上記の流れで、インターネットで検索して一番最初に出てきた山の手事情社の一日体験ワークショップに申込み、参加しました。そこで体験したこと、聞いたことが私にとって、とても魅力的でした。そして、その後いろいろ悩みましたが、研修生稽古が始まる時期が迫っていたこともあり、あっという間に演劇の世界に足を踏み入れていました。

研修生になることを決め、山の手事情社について改めてあれこれ調べてみると、Youtubeの映像には《ものまね》、《二拍子》、《インヂアンジョー》など、奇妙な世界が繰り広げられていて、観客としてみているだけなら純粋に楽しめたのかもしれませんが、これから自分がこの劇団の研修生となる、と思うと心がざわざわしていたのを覚えています。
(もしかして、大変なところにきてしまったかもしれない。)
研修生稽古がはじまるまでの間、不安な気持ちがむくむくと大きくなっていきます。
研修生としてではあれ、一定の期間所属すると決めたからには、(もっと劇団のことを知らなければ!)。不安な気持ちをかき消すように、購入したDVDが『傾城反魂香』でした。

《四畳半》というユニークな手法に最初は戸惑いながらも徐々に物語に引き込まれていきます。この物語りには様々な愛の形が描かれていますが、実際に抱き合うわけでもなく、キスをするわけでもなく、でもこの2人愛し合ってるんだなということがすっと心に入ってきて、ぞくっとするシーンがありました。もしかしたら、実際に抱き合い、キスをしているよりも、2人の絆が私の中には大きく伝わってきたのかもしれないとも思えました。
(この劇団、おもしろいかもしれない!)

そんなところから始まった、私の山の手事情社での活動。研修生で実際に山の手メソッドを体験する中で、心のざわざわはドキドキやワクワクに変化していきました。そして、《四畳半》の奥深さをさまざま見聞きし、考える機会をいただきました。そして、その魅力に魅せられていきました。

『傾城反魂香』に出会ったから、私は今ここにいるといっても過言ではないかもしれません。劇場で、生で観たかったと何度もDVDを観ながら思っていたこの大好きな作品に、俳優として関わることができることは、私にとって、とてもうれしいことなのです。

山の手事情社の『傾城反魂香』をぜひ劇場でご覧いただけましたら幸いです。

武藤 知佳

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『傾城反魂香』
2017年10月13日(金)~15日(日)
大田区民プラザ 大ホール
公演情報はこちらをご覧ください。
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