稽古場日誌
初めまして。研修生1年目の遠藤瑞季と申します。僭越ながら稽古場日誌を書かせていただきます。
中学2年生の夏、不思議な体験をしました。その日は当時僕が所属していたバドミントン部の大会の日でした。僕は、優勝には手が届きませんでしたが、あと一勝で県大会進出という所まで勝ち残ることができました。最後の相手との実力は互角、お互いに1セットずつ取り合い、残る最後の1セットを取った方が県大会に行ける。
僕はこういった大事な場面において、緊張のあまり往々にして良い結果が出せない人間でありますが、その日は違いました。
まず、負ける気が全くしない。そして、身体が羽のように軽い。全身が火照り興奮しているのに頭は非常に冷静。かつてないほどの集中力。 気づけば接戦だったこれまでのセットとは異なり、最終セットは僕の圧勝で終わりました。
今思えば、あれは「ゾーンに入る」、「トランス状態」といった類のものだったかもしれません。そして更に思うのは、そうしたトランス状態にある人を見ることは、とても面白いということです。
『傾城反魂香』では、絵師たちがすさまじい神業、離れ業をやってのけます。まさに、「ゾーンに入る」です。
狩野元信は、因縁をつけられ命の危機に瀕した時、描いた虎を実体化させて命からがら逃げ切ります。
もちろんこれはフィクションですが、人が極度の緊張状態に陥った時に発揮する尋常ならざるエネルギーが見られるこのシーンは、やはり心に深い感動を与えます。 俳優の演技というのも、ある種のトランス状態です。
さらに大きなエネルギーを籠める《四畳半》。莫大な熱量を身に受け、感嘆し驚愕し恍惚しながら今日も稽古見学をする、そんな日々を送っています。
遠藤瑞季
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『傾城反魂香』
2017年10月13日(金)~15日(日)
大田区民プラザ 大ホール
公演情報はこちらをご覧ください。