稽古場日誌

傾城反魂香 河合 達也 2017/10/11

芝居を「見る」こと

山の手事情社の演出部の河合です。

本番も間近になり、毎日のように通し稽古が行われています。時には稽古場で、時には地域の貸しスタジオなどを借りて、時には本番の会場で。
その時々の場所によって演技をするスペースが広くなったり狭くなったり、舞台装置が組まれたり組まれなかったりと様々条件が変わります。
こうなると役者にとってもその時々によって芝居のしやすさなどが変わるはずだろうと想像されるのですが、驚くべきことに山の手事情社の役者たちは多少の環境の変化などには全く動じません。
どの場所で稽古を行うにしろ芝居のクオリティが落ちることは無く、その登場人物の役に入り込み、見えている風景や湛えている感情に没頭できるのです。
当然のことなのかもしれないが、当然のように行われている通し稽古を見て、強い 役者たちなのだなと改めて実感したときがありました。

もう一つ、通し稽古を見るときにふと感じることがあります。
それは見るときの立場というか視点によって見え方が大きく変わるという事です。
稽古中の音響オペレーターとして見るときがあり、また演出部として芝居の様子を見るときがあり、はたまた裏方として舞台袖から芝居を見守るときもあります。
例えば音響オペとして見るときは、セリフの語尾のきっかけや腕の振りに合わせて斬るSEを出したりしますので、口の形や手の動きなどかなり芝居をクローズアップして見ますし、裏方として見守るときは、舞台装置にぶつからないかや早替え(一人の役者が複数の人物を演じるために短時間で着替えること)の様子などを、演技エリアも舞台袖も含めて全体を同時に広く見渡します。
どちらにしても芝居の内容に関係なくヒヤヒヤとしたり上手くいったときは独りで気持ちが盛り上がったりしますので、実は観客として作品を楽しむように見ることができておりません。

もし僕が観客としてこの作品を見るとしたら、ココを集中して見たい! というポイントが二つあります。
一つ目は役者の身体です。
《四畳半》という様式の性質上、演技中、役者は意図的に不安定な体勢を作ります。
これは見ているだけでも身体が締め付けられるようなハラハラドキドキするような体勢になるのですが、あえてそういう体勢を作ることによって作品当時の切った張ったの世界に生きる人たちの心情に寄り添っており、眼に馴染めばテレビで見るドラマなどよりももっとハラハラドキドキできます。

二つ目は作品中に時折挟まれるダンスシーン(山の手事情社では《ルパム》と呼んでいます)です。
ミュージカルなどでもダンスはありますが、山の手事情社の《ルパム》はその手のダンス等とは全く違い、ダンスの知識など無くても楽しんで見られるものなのです。
この人たちは誰なのだろう? など想像を膨らませたり、舞台全体が別の世界に見えたり、あるいは俳優の動きがキレッキレだったりなど、楽しみ方が様々あります。

残念ながら僕は観客として作品を見る機会はありませんが、もしご来場いただき作品を見られるときは、上記のポイントに着目して見て頂ければと思います。
もちろん、自分が見たい所を見て頂くのが一番ですが、ご参考までに、お芝居を楽しんで頂ければ幸いです。

河合 達也

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『傾城反魂香』
2017年10月13日(金)~15日(日)
大田区民プラザ 大ホール
公演情報はこちらをご覧ください。
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