稽古場日誌

ぺとりこおる 越谷 真美 2018/01/20

花嫁の手紙のことを思い出した

現在、研修プログラム修了公演『ぺとりこおる』に向けて絶賛稽古中です。
公演のテーマは「熱中したこと」「忘れていたこと」です。
どんな作品になるのか、ご期待下さい。

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うちの母は昔から我が子を滅多に褒めないひとで、そればかりかいつも私と妹に対して愚痴か文句ばかりであった。

10年ちょっと前、私の結婚式で、私が花嫁の手紙のなかで「鍵っ子だった」という言葉を使ったことが癪に障っていたらしく、その後何年かしてからそれを「根に持っている」と言われたときは、頭真っ白信じられないような気持ちになったものだ。
(共働きだったので、まるで寂しい思いをさせたかのように聞こえたらしい。
もちろん私はそんなつもりで書いたわけではなかったのだが)

最近ようやく「そういう人」なんだと割り切れるくらいになってきたが、思春期から最近に至るまで「自分はそんなにダメな人間なのか」とけっこう悩んだ。

さて、そんなことを思い出したのは、太宰治の「津軽」という小説を読んだから。

「汝を愛し、汝を憎む。
だいぶ弘前の悪口を言ったが、これは弘前に対する憎悪ではなく、作者自身の反省である。
私は津軽の人である。(中略)だから少しも遠慮なく、このように津軽の悪口を言うのである。
他国の人が、もし私のこのような悪口を聞いて、そうして安易に津軽を見くびったら、私はやっぱり不愉快に思うだろう。
なんと言っても、私は津軽を愛しているのだから。」

私のなかで「津軽」が勝手に「子供」に置き換わり、ずっとわだかまっていたものが急に流れ出してわかったような気がしてきたのだ。

母とはなんて回りくどく、面倒な存在なんだろうか。
まあでも、手紙だってあの時徹夜して書いたけれども、足らなかったのは結局私だったのだと思う。

10年以上たってようやく腑に落ちた。

越谷 真美

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2017年度研修プログラム修了公演「ぺとりこおる」
日程:2018年2月21日(水)~25日(日)
会場:大森山王FOREST
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