稽古場日誌

ぺとりこおる 中川 佐織 2018/02/05

忘れていたこと

現在、研修プログラム修了公演『ぺとりこおる』に向けて絶賛稽古中です。
公演のテーマは「熱中したこと」「忘れていたこと」です。
どんな作品になるのか、ご期待下さい。

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衝撃の残る映画って観たことありますか?
そういう映画があると語りたくなりますよね?

私にもそういう映画があります。
10代の頃父と一緒に観た、深夜にテレビ放映されていた映画です。
その時なんて素敵な映画だと思ってみていたのですが、最後のシーンで「ん? どういうこと?」
と疑問を持ち、映画を見終わったあとに、父に「どういうこと?」と、むしろ解釈を聞きたいというより同意を求めて聞きました。
「そんなん、自分が病気で死んでいくのを見せたくなかったからやろ。」と、呑んだくれながら観ていた父から?!
いつもは「分からん。」という父から?!
ちゃんとした答えが返ってきて、そんな感性があったのー?! と衝撃を受けました。

数年後その父が病気になり、私もその頃には実家を出ていて、東京の寒空の下ひとり。
ふと、その映画のことを思い出して観たくなりました。
思い出に浸りたかったんでしょうね。
うろ覚えの内容とタイトル名をネットで検索をし、すぐに見つかりました。
そして、レンタル屋へ。
今ならラストのシーンの意味が分かるかもしれないと、父を想い期待を込めて観ました。
全然つまんなかったんですよ。
あの頃の私はなにが素敵と思っていたのか?
ラストのシーンも、その時よりもさらに意味がわからなく感じてしまいました。
同じ映画でまたも衝撃を受けることに。

そして今この日誌を書きながら、もう他界した父を思い出し、また観るかーと思います。
今なら分かるかもしれない。いやいや、分からなくても観たいのです。
忘れていく思い出に浸るために。

『ぺとりこおる』も、そんな忘れていた思い出を浮きたたせる装置だとしたら、心して観ていただきたい。

中川佐織

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2017年度研修プログラム修了公演「ぺとりこおる」
日程:2018年2月21日(水)~25日(日)
会場:大森山王FOREST
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2018年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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