稽古場日誌

ぺとりこおる 研修生 2018/02/17

匂いの話

現在、研修プログラム修了公演『ぺとりこおる』に向けて絶賛稽古中です。
公演のテーマは「熱中したこと」「忘れていたこと」です。
どんな作品になるのか、ご期待下さい。
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僕は匂いフェチだ。
恋人に求める第一条件は良い匂いだし、見慣れないものを手にした時はまず匂いを嗅ぐ。
例えば電車から降りて外に出るときなど、自分の周りの空気が変わる瞬間、つい匂いを鼻いっぱいに嗅いでしまう。

そして、これは誰しもが経験したことがあると思うのだが、匂いが記憶と結びつくようになった。
街中ですれ違った人の匂いを感じたとき、それと同じ匂いの知り合いを思い出す。
日焼け止めクリームの匂いで、去年の夏に海へ遊びに行ったことを思い出す。
どこかの家から匂う夕食の匂いで、子供の頃の夕暮れの帰り道を思い出す。

昔は、ある匂いを嗅いだ時、嬉しさにしろ悲しさにしろ、鮮烈な感情が思い出されていた。
しかしある日、僕はあることに気がついた。
匂いによって喚起される感情が、歳を重ねるごとにぼやけて、不明瞭になって、空虚感、寂しさだけになっていくことに。
例えば、僕は小さい頃、金木犀の匂いを嗅ぐと、普段行かないような広めの公園で、落ち葉の中を走り回って遊んだあの楽しい記憶を思い出していた。
しかし、歳を重ねて、嬉しい秋も過ごせば、悲しい秋も過ごした。
金木犀の匂いを嗅ぐだけで、色んなことを思い出すようになった。
色んな感情が重なって、寂しさに収斂していったのだ。

ぺとりこおるは、雨が降ったときの匂い。
ぺとりこおるを嗅いだとき、観客の皆さんはどんな事を思い出すだろうか。
どんな感情を想起するだろうか。
僕ら5人の発するぺとりこおるで、観客の皆さんに様々な事を思い出していただきたい。
そして、会場全体で、様々な感情が重なって、混ざり合っていく様をぜひ一緒に体感できればと思う。

遠藤 瑞季

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2017年度研修プログラム修了公演「ぺとりこおる」
日程:2018年2月21日(水)~25日(日)
会場:大森山王FOREST
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2018年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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