稽古場日誌

ぺとりこおる 名越 未央 2018/02/24

漱石のリズム

現在、研修プログラム修了公演『ぺとりこおる』に向けて絶賛稽古中です。
公演のテーマは「熱中したこと」「忘れていたこと」です。
どんな作品になるのか、ご期待下さい。
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『ぺとりこおる』は、夏目漱石の短編小説「文鳥」をモチーフにしている、と聞いて、文鳥? はて知らんな、と思った。

夏目漱石、と言えば……
「こころ」は、昔読んでおもしろかったような、気がしなくもない。
しかし残念、いまいち思い出せぬ。
「坊ちゃん」は、けっこう最近テレビドラマでやってなかったかしら? たしか私が昔好きだったジャニーズ主演で……(ググる)……え、うそ2年も前だっけ……⁉︎ 時の流れって恐ろしいわぁ……。
へ〜漱石没後100年の記念ドラマだったのね。100年か……あ。
あらあらあら、漱石って樋口一葉と同時代の人じゃないの!
ここで突然ピンときた。

私が山の手事情社に入団して初めて立った舞台が、『にごりえ』だ。
その名の通り、樋口一葉の小説「にごりえ」をモチーフにした作品である。
100年以上も前に書かれた文章は、当然のように難解で読みにくい。
歴史的仮名遣いに、改行はほとんどなし、会話文に「」がないので地の文との区別もつかず、意味も読み方もわからない言葉が星の数ほど。
わっかんねー! と思いながらも、何度もなんども声に出して読むうちに、ふと気がついたことがある。
一葉の文章には、独特のリズムがある。
読んでいても聞いていても、飽きさせない心地良い美しい日本語のリズムが。
不思議なことに、この心地良さによって作品世界にするりと入り込んでしまうような感覚を覚えた。
登場人物のそこはかとない物悲しさみたいなものに触れたような。

そう言えば漱石も、「吾輩は猫である。名前はまだない。」という、あまりにも有名な、抜群のリズム感で日本語を紡いだ人ではないか。
それはきっと「文鳥」でも発揮されているに違いない。
そのリズムに、研修生たちは何を感じ、いったいどんな想いを込めるのだろうか。
ちょっとワクワクしてきた。

PS.「文鳥」は青空文庫ですぐに読めます。気になった方はぜひ。

名越未央

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2017年度研修プログラム修了公演「ぺとりこおる」
日程:2018年2月21日(水)~25日(日)
会場:大森山王FOREST
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2018年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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