稽古場日誌

この間、たまたま現在のロシアの演劇事情が話されるシンポジウムを聞く機会があった。
ロシアでは、チェーホフなどの古典作品を上演することがもっぱらのメインで、観客のほとんどはどんなお話しなのか事前に知っている。
すると、何が起きるのかというと、観客の楽しみが、「どんなお話しなのか?」から、「どう上演されるのか?」に変わってゆくのである。
制作者は妄想を膨らませ、お話しを解体し、例えばチェーホフの「かもめ」という作品が、セリフは確かに「かもめ」だが、まったく「かもめ」には見えないし、ニーナはそもそも誰なんだ? みたいな作品が出来上がり、観客はこんな「かもめ」は見たことがないと面白がる。
お話しはもう知っているので、そのお話しがどう解釈されて改変され、上演されるかが見たくて、観客はわんさか劇場に集まる。
そんな評論家みたいな好事家がメインの観客なのだ。
しかも、そんな演劇が国の文化の中心なのである。
いってみれば演劇国家なのですよロシアは。

今回、「テンペスト」を上演するために訪れるルーマニアもかつては社会主義国家であり、ロシアと同じように演劇がとても盛んな国である。
山の手事情社のようにギリシャ悲劇やシェイクスピアなどの古典作品を現代的に上演するカンパニーにとっては夢のような国である。
私たちの作品がどう面白がってもらえるか? 今からとても楽しみだ。

斉木和洋

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劇団山の手事情社ヨーロッパツアー壮行公演『テンペスト』
(下丸子×演劇ぷろじぇくと2018特別企画)
日程=2018年4月12日(木)~13日(金)
会場=大田区民プラザ 大ホール
詳細はこちらをご覧ください。

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