稽古場日誌

『テンペスト』の初演は3年前の2015年。
あの時演じたお気に入りの役は、今回は頑張り屋の後輩が演じます。
時おり、そんな後輩が稽古をしているのを横目でみて、自分はどうやって演じていたんだろう? と思い返してみても、案外覚えてないものです。
最近のことのように思っていましたが、本当に凄まじい勢いで記憶が忘却されていくことに、恐ろしさを感じつつ、「あぁ、これってそういう役だったんだな」と、3年前の思い出と共に、その時に出せなかった役の良さが観れることを楽しみにしてます。

しかし、そんな私も、尊敬すべき先輩の役を演じるんですね。
他人ごとが、自分ごとです。
伝統芸能もそうですが、
「役を受け継ぐ」というのは、その人の精神や美意識を読み解くことと、その人の演劇に生きた時間を想像することなのかもしれません。
見えないものを見えるようにならなくてはいけないんでしょうね。
でも、まぁ、単純に「この役は面白い」と自分でも思えるし、お客様やこれから受け継ぐであろう後の人が観ても思ってもらえるものになれば、小難しいことは関係ないことに感じます。
「あの役を演じてみたい」と、どこの国でも思われたい! 欲を抱いてると、言っちまおう。

4月12日と13日の壮行公演をお楽しみに。

中川佐織

**********
劇団山の手事情社ヨーロッパツアー壮行公演『テンペスト』
(下丸子×演劇ぷろじぇくと2018特別企画)
日程=2018年4月12日(木)~13日(金)
会場=大田区民プラザ 大ホール
詳細はこちらをご覧ください。

稽古場日誌一覧へ