稽古場日誌

ルクセンブルクでの公演を終え、丸一日かけてルーマニアのクライオーヴァに移動。
劇場のリハーサル室で稽古していたころのエピソードです。

休憩時間に飲み物を買いに外にたら、公園で日向ぼっこをしていた恰幅の良い初老の男性が立ち上がり話しかけてきた。

「やあ、この街によく来たな。君達を待っていたよ」
親しげに握手をしてくる男性。
「俺はな、君達の『タイタス・アンドロニカス』を東京で観たんだよ、ワッハッハ!」

え、東京で見た? まーさか。と思ったので拙い英語で

「あなたは、東京で、僕たちを、見たのですか?」
てな感じで聞いてみた。すると男性は
「イエスイエス、非常にユニークな舞台だったな。だから楽しみにしていたんだ。明日本番だろ? 頑張れよ、ワッハッハ!」
バンバン! (肩を叩かれる俺)
「お、お、ムルツメスク! (ありがとう)」

その男性とはそこで別れた。
彼が本当に東京で山の手事情社を見たのかは定かではない。
でも歓迎して激励してくれたのは確かだ。

遠い地に来て毎回思うのは
「時間と労力とお金をかけて作品を誰に見せようとしているのだろうか?」
という事だ。
日本でやっていた方が余程良いじゃんか、とも思う。
けれどさっきの男性の様に待っていてくれる人がいるならどこにでも行こう、とも思う。

クライオーヴァ、また行けることを願う。

川村 岳

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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ:6月18日(月)予約開始
劇団山の手事情社
予約フォーム
TEL:03-6410-9056
MAIL:info@yamanote-j.org

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