稽古場日誌

あたしのおうち 名越 未央 2019/02/05

「あたし」の「おもしろい」を求めて

アーティストとは、自分だけがおもしろいと思ったものを、より多くの人におもしろいと気づかせる人なのだと聞いたことがあります。
言葉で言えば簡単だけど、それは恐ろしく難しいことです。つまらないことをおもしろいと言えば、その人自身の感性がつまらないのだと判断するのが世の常だし、人類の長い歴史の中でおもしろいことなんてもう出尽くしてしまったような気がするし。

でも、最近思います。
おもしろいと感じる、その感覚が間違っているとかいないとか、そんなことは大した問題じゃないのかもしれない。
自分はこれがおもしろいんだ! と信じて追求していく情熱、すべてはそこから始まるんじゃないだろうか。そして今の時代はもはや、おもしろさに「気づかせる」というよりも、おもしろいと「思わせる」、そういう力業によって新しいものが次々と生まれているのかもしれません。

とは言え、自分だけの感覚というのはなかなか信じられるものではありません。劇団の研修生として過ごす期間は、ついつい先輩劇団員の言うことが正しいのだとあまり考えずに思ってしまいがちです。

私が研修生だった頃、こいつはおもしろい! と多くの劇団員に言われた同期がいました。でも私には、どこがおもしろいのかよくわかりませんでした。
わからないけれど、劇団員の方々にはきっといろんなことが見えていて、私は無知で未熟だからわからないに違いない、先輩と同じ様にわかるようにならないといけないんだ、そう思いました。
でもその一方で、みんなが同じ様なことを言う山の手製色眼鏡みたいなものの存在にどこか窮屈さも感じ、その眼鏡を手に入れたいような入れたくないような、もやっとした感覚もあったのです。当時はあまり自覚することはなかったけれど。そして今なら、眼鏡はたくさん持てば良いのだと思うけど。

先輩がなんと言おうと、舞台に立って演じるのは俳優である自分自身です。
何がおもしろいんだろう……ともやっとした感覚は大切に、じゃあいったいどうすれば自分はおもしろいと思えるんだ!? というのを必死に探して追求することこそ、俳優になるための第一歩、新しいものを生み出すための第一歩だと思います。山の手事情社の研修プログラムは、それが存分にできる環境です。

研修生一人ひとり、演出の越谷さん、演出補佐の私、そしてスタッフの方々、それぞれが追求する「おもしろい」を結集して、『あたしのおうち』を創り上げようと日々奮闘しております。

どうかあなたなりの「おもしろい」を見つけに、劇場へいらしてください。

お待ちしております。

名越未央

**********

あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
詳細はこちら

2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
詳細はこちら
年間ワークショップ参加者体験談
年間ワークショップカリキュラム

稽古場日誌一覧へ