稽古場日誌

あたしのおうち 倉橋 建 2019/02/24

生々流転

大学時代、演劇を専攻していた仲間とユニットを組んだ。
それが演劇に踏み込んだ瞬間だった。
大阪で「ともにょ企画」という団体を組み、それなりに活動を行っていた。

ある時、仲間の一人がワークショップに参加し、そこから戻ってきて会議でこう発言した。

「舞台上の空間を信じられる作品を作る集団でありたい」

聞いただけではわからなかった。
それの面白さもわからなかった。
彼らと一緒にやっている内に、自分がズレている感覚を覚えた。
そこで初めて、自分の才能とか役者としての今後を考えた。

このままやっても何も変わらないかもしれない。
自分はある決心をして、劇団の主宰にこう言った。

「次の公演で、主役をやらせてほしい。そこで今持っているもの全て出し切ってダメだと思ったら演劇を辞める」

結果は今こうしてこの文章を書いていることでお察しだと思うが、そこで初めて演劇の面白さというものに触れた気がした。
舞台上にちゃんといて、信じられる空間を作れると、今ここじゃないどこかにいる不思議な感覚になる。
時には銀河系の真ん中にいるし、はたまた海の底深くへも行ける。
勝手に感覚が動くのだ。
またあそこへ辿り着きたくて、まだ自分は演劇を続けている。

あれからもうすぐ5年。
山の手事情社でまた、同じ様な感覚に陥っている。
面白くなりたい、面白いって何?
今のままの自分では辿り着かない。
底が見えることが幸か不幸か。
当人でないと解らない悩みを抱え、たまらず声を漏らす。

きっと研修生の皆も、そんな瀬戸際に居るのではないかと想像している。
自分もまた、新しい壁にぶち当たっている所だが、彼らに言うことがあるとしたら

「悪いオンナに引っかかったんだよ。良くないと解っていても離れられない」

自分が周囲に、なぜ演劇を続けているのか? と問われたときに答える文句だ。
修了公演を迎えたときに、彼らの口から引っかかりましたと笑顔で聞けますように。

倉橋 建

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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