稽古場日誌

methods&過妄女 川村 岳 2019/05/18

あの頃のオレ

ちょっと恥ずかしい話。
学生の頃、同時に2人の女性を好きになったことがある。

おおざっぱに言うと1人は色気があり男心をくすぐる魔性の女タイプ、もう1人は大らかで母性に溢れた聖女タイプだった。
2人とは仲が良かった。会話をしていても話題が途切れることはなく、いわゆる気が合う関係だった。
当たり前の様に私は恋に落ちて、毎日ウキウキしていた。と、同時にモヤモヤしていた。
「どっちを選べば良いのだろう」
と。

何のことはない。どちらかを選べば済む話なのだが、出来なかった。日本が一夫多妻制なら良いのにと思った。

ある日何かのきっかけで気持ちを伝える機会があった。学校帰りだったと思う。相手は魔性の女タイプの子だった。
結果は良いともダメともつかない曖昧な返事だった。
それから数日私はモヤモヤしながら過ごした。告白の結果がどこに落ち着くのかは勿論のことだが、聖女タイプの子に対して、
「(あなたを選ばなくて)申し訳ない」
という気持ちで一杯だった。なんとなく彼女を裏切ってしまった感があった。片思いなのにだ。

しばらくして聖女タイプの子に彼氏が出来た。同時期に魔性タイプの子が他の男と付き合い始めたという話を耳にした。
不思議とショックは少なかった。
2人のうちどちらかを選ぶという心理的負担が無くなった開放感の方がまさった。

そう、一番大事に考えていたのは自分の事だったのだ。何とも勝手なものだ。
恋愛の主役は常に自分で、自分が楽しい・正しいことを選択する。そしてちゃんと失敗して次の恋愛に挑もうと心に決めた。

『かもめ』の登場人物は恋愛ばかりしている。その中でも相手の事情を察したり、顔色ばかり伺っている人物は大抵失敗している。

チェーホフの時代からその辺の恋愛模様は変わらないのね。

川村 岳

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

 

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