稽古場日誌

methods&過妄女 研修生 2019/06/11

嫉妬させる身体

2019年度研修生の柴 十紀子です。
山の手事情社の芝居を初めて観たのは高校2年生のとき、それは若手公演の『にごりえ』だった。観劇後の私は、脳みそに強い痺れと、どうしようもないジェラシーを俳優の方々に対して感じていたのを憶えている。その時は何故自分が俳優にジェラシーを感じているのか分からなかった。
分からないながらも「演劇」もしくは「山の手事情社」に惹かれて、その夏、山の手事情社の「演劇サマースクール」に参加した。ただひたすらに楽しかった。自分の身体と感情の可能性に気がついた。
その冬、再び「演劇ウインタースクール」に参加した。ただひたすらに辛かった。自分の身体と感情の薄っぺらさを目の当たりにした。これ以上傷つかないように、という防衛本能が私に「演劇」から目を背けさせた。

大学生になり、私の身体と心は沢山の刺激を受け経験を積んだ。知らなかった感情を沢山知った。が、同時に情報量の増えたその身体と感情を上手にコントロール出来なくなっていた。
その頃、相変わらず観続けていた山の手事情社の芝居から受け取るものが少しずつ変わっていくのを感じ、『にごりえ』を観たときに感じた俳優へのジェラシーの正体がぼんやりと見えるようになった。

気がついた。私は自分の身体と自分の感情がとても好きなのに、全然分かっていない。2度目のワークショップで感じた苦しみはこの無知の自覚だったのだと思う。
一方俳優は自身の身体と感情を知っていて、それを表現のメディアとして使いこなしている。かっけぇ、ずるい、コレがジェラシーか。ふむ……。私も大好きな自分の身体と感情を使いこなしたい。

そんな想いを抱いて、山の手事情社の年間ワークショップに飛び込んだ。

研修生稽古を受け、『methods』と『過妄女』の稽古を見学する中で、未だに例のジェラシーを感じ続けている。私と「彼ら」の間にはまだ長い長い距離がある。これから1年間でどれほどこの距離を縮めて、ジェラシーを感じさせる側になれるかソワソワし、ワクワクしている。

俳優はすごい。すごいという語彙でしか説明が出来ないそのすごさを目の当たりにさせる『過妄女』と、その秘密を見せてくれる『methods』。
どちらもお見逃しなく!

柴 十紀子

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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