稽古場日誌

methods&過妄女 長谷川 尚美 2019/06/16

たなおろし

「自分史」を作成した。

人生に影響を与えた転機や体験についてを現在から遡って小さい頃まで書いていく。人生の棚卸しである。やり始めたときはそんなに特筆すべきことがあるのだろうか? ……と思っていたが、いやあ実に色々あるものだと我ながら感心した。
家族・友人・仕事関係に始まり、恩師との出会い・受験・部活。恋愛は……。

そこに書き切れず埋もれているものがまだまだあって、これはその中の個人的な一つです。

山の手事情社を知ったのは、高校時代の演劇部の友人がきっかけだった。

その子は小劇場の劇団を観るのが大好きで、山の手事情社もその中の一つ、彼女のお気に入りで、観た芝居についても、大好きな役者さんについても興奮して話をしてくれた。

私の母校の演劇部は女子高で、男役も女性が全て演じていた。宝塚台本等を使い「男と女の恋愛」を描いて文化祭で発表することが多く、宝塚はもちろん、劇団四季や新劇が好きな部員が多い中、彼女は異彩を放っていた。

世はバンドブームで、劇団でバンド活動を行う人も多く、彼女もそれにたがわず演劇部員たちとバンドを組んで活動していた。

お気に入りのバンドライブに一緒に連れていかれて、案の上ずーっと立って聴くことになり、ノリノリの観客に足を踏んづけられそうになったのを覚えている。

そんな彼女に影響されて、自分でも小劇場の演劇を観ることにした。彼女のおかげで、多々、各劇団の公演を観ることができたと感謝している。それに伴い、小劇場の台本で演劇部で芝居もできたし、部外活動で発表もできた。

人生初の山の手事情社の観劇には、自分でチケットを購入して一人で行ったと思う。台本を使わず 《ものまね》や《歩行》や《フリーエチュード》や《ルパム》などで構成された演劇は、観ているうちに各俳優の力と集団の創造力を感じて、毎回観るのが楽しみになった。

高校を卒業して、演劇部の友人は早稲田大学に入学した。高校生の頃からずっと早稲田志望だったし、演劇研究会の芝居も観に行っていたし、当然彼女も入部するものと思っていたが、入部をせず、別のサークルに入ったと、人づてに聞いた。えええ!? と驚いたのを覚えている。

その理由をしっかりと聞いたことはないが、(いつか教えてください)ここ数年で再会した彼女に会うたびに、やっぱり人の縁って不思議だな~と思う。

私は大学時代も山の手事情社の観劇を続け、大学卒業と同時に入団することとなる。今にして思うと、多分彼女の方が驚いたかもしれない。

そのあと、さまざまな師に出会い、学ぶことになるのだが、それもまた人の縁。縁を受けて自分が行動するとまた新しい縁が生まれていく。

人は関係性の中で存在するものだとやはりつくづく思う。
長くなるので、この辺で。

山の手事情社は今年、創立35周年を迎えます。 

稽古方法自体を提案したり、持ち寄ったり、あくなき実験と淘汰を繰り返し現在の《山の手メソッド》が存在しています。
公演では、集団創作で培った財産を観客の皆様にお見せできますよう。山の手事情社35年の歴史を棚卸ししてお届けする予定です。

『methods』&『過妄女』を、どうぞよろしくお願い致します。

長谷川尚美

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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