稽古場日誌

methods&過妄女 安田 雅弘 2019/06/17

『methods』って

間もなく公演の始まる『methods』。山の手事情社の稽古方法《山の手メソッド》を紹介します。と言うと、本番でなく稽古を見せて「金」を取るのか? というお客さまもいらっしゃいます。確かに「稽古方法の紹介」という言い方は、誤解を招きやすい。申し訳ありません。

単なる「紹介」ではありません。山の手事情社は、おそらく他の演劇集団と比べて特殊な稽古をしています。その稽古を重ねると、「こんなことができるんだ!」という「エンターテインメント」舞台が『methods』です。驚いて、笑って、楽しんでいただきたいと思います。

《山の手メソッド》の何が特殊かというと、「自分で考えなさい」という考え方が徹底されているところでしょうか。
俳優の舞台上の移動や登退場は通常《歩行》で行われます。じゃ、どう歩けばよいのか。普段どのような《歩行》の練習をしておけばよいのか。
「自分で考えなさい」。
その結果さまざまな《歩行》ができあがりました。俳優が種々の歩き方をするのは、見ているだけで面白いと思います。

《ルパム》と呼ばれるダンスシーンも同様です。芝居にダンスシーンを入れたい。ダンスがしたい。
「自分で考えなさい」。
そうすると、何でダンスシーンが必要なのか、本来ダンスって何なんだ? というところから考えることになります。身体表現の理解が高度になります。メンバーの誰か一人が考えたり、振付の先生が来て教えたりするわけではありません。チームで悩んで振りのアイデアを出して、徐々に完成に近づけます。
結果としてかなりユニークな、独自のダンスシーンができあがります。それもご覧いただこうと思います。

《ものまね》という稽古もあります。身近な印象的な人をまねる。どんな人がいるのか。
「自分で考えなさい」。
身近にそうそう面白い人が揃っているわけではありません。しかし待てよ、この人のこのクセ、今まで気にならなかったけど、やりようによっては印象的になりそうだぞ。と人間観察が広く深くなります。「演技力」に直結する能力が開発されます。
《ものまね》の名手・「まゆたりん」こと水寄真弓が久しぶりに出演し、名作を披露します。フレッシュな若手メンバーの《ものまね》も見ものです。

そもそも演劇をやるにはどんな稽古が必要なんだろう。それでさえ、
「自分で考えなさい」。
いろいろな稽古方法が生まれました。それも今回ご覧いただきます。
25年前まで劇団員だった清水宏さんを特別ゲストに迎えてお見せするのは《インヂアンジョー》という稽古。清水さんは言うまでもなく、現在「日本スタンダップコメディ協会」の会長さんです。抜群の実力で、全国を忙しく飛び回っています。その清水さんが、かつて完成させた稽古が《インヂアンジョー》。驚くことに四半世紀たった現在でも山の手事情社ではこの稽古をしています。
「強権を持つ演出家がムチャクチャな演出をする」というアイデアから生まれました。
その稽古を初めてやった時、演出家役の清水さんが、「オレはインヂアンジョーだ」というセリフを俳優に言わせて、それがおかしくて皆笑い出し、しばし稽古が中断し、それ以降その稽古は《インヂアンジョー》と呼ばれることになったのです。

《インヂアンジョー》の映像を添付します。どんなものか、一端はご覧いただけると思います。
https://youtu.be/PWHo3RlpMsM

昨年上梓させていただいた『魅せる自分のつくりかた』(講談社選書メチエ刊)が読む《山の手メソッド》であるならば、今回の『methods』は見る『魅せる自分のつくりかた』です。

書籍と併せてお楽しみいただければ何よりです。

『魅せる自分のつくりかた』(講談社選書メチエ刊)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000310667

安田雅弘

**********

劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

稽古場日誌一覧へ