稽古場日誌

テンペスト 鯉渕 翼 2015/01/10

怖いもの見たさを操るものは?

酔っぱらいの喧嘩、救急車が近所に止まった、火事、交通事故、殺人事件、電車の人身事故、災害現場、テロリストの犯行現場、テロリストが攻撃を受けている所、不審船とにらみ会う海上保安庁、戦時中の生々しい映像・・・etcetc。

好んで見たいとは思わなくても、何となく時間に余裕があったり現場が近所だったり自分の安全が確実に保証されていたりすると、ついつい生で見に行きたいと思うか、映像だったらつい見ていてしまうということはありませんか。

私はあります。
むしろ誰にでもあると思っています。
人間美しく慈愛に溢れたものが好きであればその分だけ汚く残酷な物を心のどこかで求めてしまっているものだと。
見て見ぬふりをしたり、必死に押さえていてもふとした拍子に無意識に表に出てきてしまうものだと。

劇中の妖精エアリエルは、復讐や人間の本質と言うものに何処か美しいものを求めている、むしろ美しくないものから目を背けようとしているかのようなプロスペローを、巧みに残酷な世界へ誘導しようと暗躍します。
皆さんも気がついたら誘導されていて、エアリエルの残酷な世界から目が離せなくなってしまうかもしれません。
少なくとも私はとっくに自分のエアリエルにやられて汚く残酷な世界を覗くことが好きになっています。

最高にエキサイティングで、ちょっぴり危険な今回の作品。是非劇場へ観劇に来てください。

鯉渕

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