稽古場日誌

本番まで一ヶ月を切った。

稽古もいよいよ佳境に入る。

御会式が終わり、心なしか静かに感じる大田区池上。

「女殺油地獄」

いつの時代も揉め事の原因は「金か色恋沙汰」だよなぁー。

と、この作品を読むと常々感じる。

与兵衛が油屋の女房お吉を殺害するに至った経緯は、与兵衛の生い立ちや色々な不運が重なった故に起きた出来事と考えることもできるが、結局は金が原因なのである。

貨幣制度が成立した時代から、現代にかけて起きた戦争や事件はほとんどは金に起因すると僕は感じる。

豊かさ  =金
地位・名誉=金
権力   =金

金、金、金である。
世の中全てが金である。

ただし、これは僕の完全な主観的考えであることをここに宣言しておきます。

しかし、そんな考えの持ち主である僕が毎日、アルバイトをしながら芝居を続けている。

矛盾である。

完全な自己矛盾である。

人間は時として、矛盾だと気づきながらも、その方向に進み続けてしまうから不思議である。
もしかしたら根底では世の中は金だけじゃないと信じている自分がいて、「世の中、金」だと思う自分に対してクーデターを起こそうとしているのかもしれない。

高橋真理(僕の名前です)国という国家の政権を賭けた、高橋カネゴン愛国戦線と真理貧困革命戦線との内戦である。

現在、領土を実効支配しているのは高橋カネゴン共和国であるが、真理貧困革命戦線が内戦に勝ち、政権を掌握した場合、僕は一体どんな人間になるのだろう。

今から楽しみである。

そんなくだらないことを稽古終わりの夜道に想像し、一人ニヤつきながら、家路を急いだ。

ただ、本当に後にも引けない借金を抱えてしまった時、僕はどんな行動をとるんだろう。

ねぇ、与兵衛さん。

高橋真理

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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html

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