稽古場日誌

タイタス・アンドロニカス/女殺油地獄 大久保 美智子 2015/11/08

本番が始まってしまいましたが

うしろに目が欲しい。

いろいろ欲しいものはありますが、今一番欲しいものです。

《四畳半》は普通のお芝居のように、リアルな距離をとらない。

いわば「絵本の挿絵」。関係や感情を、構図で見せなければならない。

パッと見て関係がよく分かり、なおかつ美しく、展開してより面白くなる構図を必死で探す。

「タイタス・アンドロニカス」は、舞台セットもほぼ無く、場面はクルクルと変わり、人間関係も複雑。なので、構図勝負、というところがある。

バッチリの構図がゲットできれば、もうほぼ成功。演技が若干崩れても、構図の強さでごまかせる。

自分の出ていないシーンについてはよく分かる。こいつをこっちに配置すれば、こういう効果が出る、みたいなことが。

が、出てしまうと、「絵」の中のひとつのピースになってしまうと、とたんに分からなくなる。うしろに目が無いからだ。

自分のうしろで今どんなお芝居が展開しているのか、自分はどこでどうしていれば機能するのか。まったく分からない。

せめて邪魔にならないように腰をかがめて小さくなっていよう、などとネガティブな作戦に出ると、自分の存在が利いてこない。

もちろん「チラ見」も使うけれど、役の人に集中したいのに、「チラ見」ってやっぱりおかしい。だって、役の人はその場を生きているはずで、「チラ見」する美智子さんとは別だもの。

いにしえの武人は、うしろの敵もよく見えたというが、《四畳半》プレイヤーにもそのような能力が必要なのだろうか。つくづく「修行なり…」と思う。

あーあ。クリスマスプレゼントにくれないだろうか。うしろに目。

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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html

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