稽古場日誌

10年以上前、人形浄瑠璃で「女殺油地獄」を見た。

与兵衛がお吉を殺害するシーンは、それまで繊細に動いていた人形が舞台の端から端までを正に人形のようにつるーっと滑ったり、そんな馬鹿な! とつっこみを入れたくなるようなありえない動きをする。
とても単純でこっけいな動きだったが、なぜか悲しみも感じた。

それは人形だからこそ成立するシーンだったが、そのとき、もっと人間にしか出来ない表現、山の手事情社の《四畳半》でしか出来ない身体表現がある!
もっといろいろな見せ方をしていきたい!
と表現活動にワクワクしてきた記憶がある。

それから事あるごとにそのシーンの記憶がよぎって、ぎりぎりだけど成立する凄いシーンを創りたいと思っていた。

時が過ぎ、今回、私は与兵衛に殺されるお吉を演じることになった。

身体や息のコントロールも追いつかず、理想にはまだまだ遠くやたらとイライラしている毎日。

人形のようにはいきませんね。

でも私だからこその生々しいシーンになるようぎりぎりまであがきたいと思います!

山口笑美

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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html

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