11/02/19
『修了公演にまつわる話〜担当編』
研修生担当…甘く苦い香りがします…
わたしも大学の演劇研究会で、エチューダーなるポジションの先輩に半年間つきっきりで稽古してもらいました。
いつしかわたしも大人になり、自分もエチューダーを経験し、
当時は神とあがめていたエチューダーが
単なる芝居を始めて3年目のひよっこだったのだ…
とだんだん気づくようになりました。
そのひよっこが、まがりなりにも演劇のドシロウトを相手に教えるわけですから、
相当なテンションが必要になるわけです。
エチューダーになったとたん、タバコを吸い出すとか。
エチューダーになったとたん、メガネをコンタクトに変えるとか。
エチューダーになったとたん、髪を染めるとか。眉を整えるとか。
演劇に関係ない分野での箔付けに必死。
傍から見ていると痛々しくもかわいらしいのですが、
そんなことでもしないと、人をひっぱることはできないのですね。
じっさい、わたしの担当だったその先輩からは、
よく考えてみれば、今でも使える演劇的な技術なんかいっこも教わりませんでした。
しかし、必死でした。稽古場では誰よりも弾けていました。
おもしろいとかおもしろくないとかを超えていました。
その先輩の演劇的な実力などはもはやどうでもよく、
とにかくその凄さにのみ、私たちは信頼を寄せ、
最後まで泣きながらついていったのでした。
傍目には、回りのみえていない青臭いバカたちと映っていたことでしょう。
それで結構。
バカになれなければ人はついてこない。
かなり間違ったかたちで、わたしがその先輩から学んだことです。
今年度の研修生担当である斉木くんと麻里絵さんは、
もちろん演劇をはじめて3年目のドシロウトではありませんが、
人をひっぱるしんどさは同じであると思われます。
今期の研修生がやがて巣立ち、しばらくして斉木くんや麻里絵さんから何を学んだろう?
と振り返るとき、それは演劇的な技術なんかじゃないような気がします。
表現するときに一番大事な根っこのところを、しっかり体に刻みつける。
そのために最もしんどいこの時期を、バカ大事にバカ全力で過ごして欲しいと、
ありきたりですが、願わずにいられません。
大久保美智子
「The Dead Father」公演情報
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