永里子は感心な女である。

いつもバッチリメイクして稽古場に現れる。
朝仕事をしてきた日にメイクしているのはわかるけれど、そうでない日もだいたいバッチリメイクしている。
メイクしないでどこかに出かけていくなんてありえないらしい。

それだけ見られている意識があるんだろうから、結構なことだとは思うけれど、しかし周りからみれば、隙だらけの女である。
誰が見てもそうである。

もう少し姿勢をよくするだけで、念入りにメイクなんかするよりもはるかに美しく見えるのに…と俺なんかは思ってしまうのだが、余計なお世話なのだろう。

しかし油断ならないところもある。
頭悪そうに見えるが、海外ツアー中とかに飛行機やバスの中で読む本はドストエフスキーやトルストイといったロシア文学の長編である。

そんな知性的な部分が滲み出れば、メイクしなくてもキレイなんだが(たぶん)。

『にごりえ』でどんな顔を見せてくれるか。
小栗永里子をよろしく。

山本芳郎