稽古場日誌

研修生研修生(体験談) 2020/07/31

巡り合いと物語

はじめまして、柏原有里です。
研修生時代の感想を書いてほしいと突然の依頼がありました。
ぼちぼち、書かせていただきます。

私が山の手事情社に研修生として飛び込んだのは数年前。
今となっては、随分と遠い話です。

演劇が好きだったかと聞かれたら、いや、別に。
お芝居がしたかったかと聞かれたら、いや、全く。
好きな戯曲作品はと聞かれたら、いやとんでもない、と。
正直、何一つ興味なんてありませんでした。
そんな私のどこかをぎゅるりと捉えたのは、この劇団の稽古でした。
そうです、山の手事情社の稽古に、私は漠然としながらも確かな可能性を感じました。

身体に意識を向けろ、集中するんだ、というただならぬ空気感。
そして、身体を物質として扱うのではなく、感情の動きや習慣、そしてたった今の自分と共にあるものとして目を向けていくという、わかりづらくも冒険的且つ思索的な稽古。

それが一番惹かれたところでした。
これまで学んできた物事を、より実践的に試せる場所、そのように思ったんです。
そして、これまで育ててきた自らの野望に、新たな示唆をもたらすに違いない、そういう予感です。
ええ、わかりづらいかもしれませんけど、そういうことって、ありますよね。

そしてご想像の通り、吐き気のする毎日でした。散々たる日々でした。
私、何がしたかったんだっけ。そんなことを考える日々。日々悶々。
演劇知らないしと一生懸命に呑みに参加する。
あれ、何がしたかったんだっけ、とまた思う。金はなくなり、心はさもしく、寒い。
働く、稽古する、勉強してみる、寝れない、眠い。外のベンチで寝る。
家に帰れない。時間がない。あれ、なにやってるんだっけ。
《滑舌》、《ものまね》……あれ? えーっと。あ、《二拍子》か。
心はドーナツ化するし、一体どれが本当の感情なのかわからない。
国家試験もある。稽古もある。人を呼ばなきゃいけない。めんどくさい。
終電を逃す。喫茶店で夜を明かす。寝るなとどつかれる。悲しい。
周囲がうるさい。自分の内側もうるさい。不満高まり怒りになる。
つまらない、くだらない、面白くない。中身のない怒りと憤慨。
気持ち悪い。眠い。あー、叫びたい、叫んだ。
何してんだ自分。久しぶりだぜ虚無の絶頂、と呟く。そしてまた稽古。

まさにこのような日々でした。
言ってしまえば、そういう人生の流れの中に、たまたま研修生としての物語が重なった。
そういうことです。そしてこの物語を経た今、私は変わらず当時の野望の中に生きています。

美しい物語だけが善きものではない。
いくらかの筋力を保持し、長い時間をかけて醸成されていく物語は、とても地味なところから生まれてくるのかもしれない、そう実感し続けた日々でした。

ここまでお読みになられた方ならわかってくださるでしょう。
私は、山の手事情社という場所に、そこでの巡り会いと物語に、とてもとても感謝しています。

2016年度研修生
柏原有里

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