11/06/21

傾城反魂香/ルーマニア

異文化交流

シビウでの公演も無事終わり、つかの間のオフを、観劇、買い物等で過ごす中、昨年行きそびれていた博物館に一人でぶらりと行ってきました。建物に入る前に中庭をブラブラ歩いていると、一人のルーマニア人に話し掛けられました。

※以下のルーマニア人の言葉は僕の拙い英語の語彙力により解釈したものです。

ル「君は日本語がわかる人だね?」
文「イエース。」
ル「良かった!ちょっと助けてもらえないかい?」
文「OK、オッケー。」
ル「やった! じゃあちょっとこっちへ来てくれ。」

と、建物の中へ連れていかれる僕。 あれ? 簡単なお願いだと思って軽く返事してたのに、何だか大層な事になりそうな予感… 関西人特有のノリが裏目に!
彼の部屋に入ると、まず名刺をくれます。見ると『Head of the Art Galleries』と書いてます。 どうやらエライ人みたい。
そして彼は自分のデスクの引き出しから封筒を幾つか出し、中に入っているいろんな国、時代の貨幣を並べ始めました。

ル「これは昔のフランス、こっちは中国、満州のもあるよ。」
文「ほほぅ。」
ル「そこで君にお願いしたいのは、これを読んでほしいんだ。」
コトリ。 そこにはまた色々な時代の日本の貨幣が。

文「オー! これはとってもバリュアブル。んー、プレシャス?」
ル「だろ?」
得意気な彼。 貨幣に記されている漢字を読んで、紙にローマ字で書いてくれとの事なので、ゴーグル型虫眼鏡をかけて(いる?)早速作業に取り組みます。

文「これはMeiji…こっちは Tenpo …スゲーな、このオヤジ。」
彼のコレクションに感心しつつ、自分の読みとローマ字表記に間違いがない事を願いながら、何とか作業を終えました。

文「フー。」
ル「ありがとう! とても助かったよ。とりあえず乾杯だ!」
仕事時間中にも関わらず、ポーランドのウォッカを振る舞ってくれ、更には博物館を案内してくれるとの事。ラッキー。

ル「この部屋は僕がディレクションしたんだ。」
文「ほー。」
ル「これはアレクサンドル公の時代の物。僕の名前もアレクサンドル、僕も王族だね!」
文「…へへ」
英語力の不足により、ルーマニアギャグにツッコめません。

ル「これは当時使われていた、罪人を縛り付けておくもの。本物だよ。」
文「おぉ、スゴい。ちょっと縛り付けられてる風に立ってみてよ。」
ル「こうかい?」
気のいいオヤジです。その後も二時間かけて博物館内をくまなく案内してくれました。彼がいないと入れない部屋にも入ることができ、かなり有り難かったのですが、案内の途中から、彼の携帯やポケットベルらしき物は鳴りっぱなし。そりゃそうだろ、仕事投げっぱなしで来てるんだから。 さすがルーマニア感覚。

14世紀〜現代までの建造物の欠片や衣服はもちろん、当時の貴族がつけていたジュエリーや、それらを入れる宝箱やその仕掛けなんかもたくさん展示されており、僕はかなり興奮しました。

演劇の為にここまで来たけど、その国の演劇を理解しようとすると、やっぱり文化や歴史にも触れないといけないのでは、と感じました。

文秉泰

11/06/14

傾城反魂香/ルーマニア

ブカレスト公演の報告です。

安田です。
少し遅くなりましたがブカレスト公演の報告です。

劇場は、「オデオン劇場」。
さすがに首都ブカレストは劇場も多く、中でも「オデオン」は市の補助を受ける有名劇場で、若者に人気のある劇場と聞きました。
国立ブカレスト劇場やオペレッタ劇場などのある界隈に建っています。
銀行だの病院だの旧共産党本部だの、でかい建物がある中では、かわいらしい建物です。

100年の歴史があり、客席の天井が何と全面開閉します。
しかも電動で、100年前からそのままとのこと。
実際に開けてもらったのですが、確かにすごい。
ちょっと歴史が違うなぁ。
1階席にやや斜面のついた席があり、2階、3階はボックス席。3階にも普通の席が広がります。4階は天井桟敷ですが、安全性を考えて今は入れていないとのこと。
歴史ある劇場は、いろいろな思いを吸い込んで、風格をたたえています。
ま、ところどころかなりガタが来てはいますね。
ヨーロッパの劇場では珍しくありませんが、舞台の広さが、客席の3倍以上はあります。
私たちが下見した日は、この舞台に客席を仮設して、「ピラマスとシスビー」という芝居をしていました。
シェイクスピアの「夏の夜の夢」の一部を素材にし、ルーマニアの演出家賞を取った作品とのこと。
見たかった!

前日は、地下にあるスタジオのロビーで稽古をしました。
スタジオは黒い部屋で、床が昇降し、いろいろな空間が作れるようになっています。
その日は「星の王子さま」を上演していました。
子どもが一人で演じるらしい。
ロビーは広さは十分なのですが、
コンクリートの箱で、声がとても反響します。
教会の中で稽古している雰囲気です。

さて当日。
やはり何か起こるもので、11:00にゲネプロを始めると、間もなくプロジェクターの電源が落ちてしまいました。
日本から持ってきた電圧変換器(トランス)が焼けてしまったようです。
原因はオペ室を4階に移したことらしいので、急遽オペ室を1階ボックス席に移動。
1時間後にゲネプロを再開できました。

本番は19:00。やはり明るい。
お客さんの出足が遅くても、もう気になりません。
19:00過ぎには補助席まで出て、3階までいっぱいです。
上演中の客席は静かで、シビウに近い雰囲気でした。
やはり後半の姫がみやに夫・元信をゆずる場面では、笑いが起きていて、ついてきてる、ついてきてる。

終演後のカーテンコールは、とても長く、エンディング前から拍手が起こり、結局5回くらい呼ばれていたと思います。
拍手は5分間ほど続きました。

雨宮日本大使がおいでになり、「本当によかった。すばらしい」とお言葉をいただきました。
他にもルーマニアを代表する演出家・トチネスク氏は、「日本を感じることができた」と。
クライオヴァ・シェイクスピア・フェスティバルのボロギナ委員長は、「シェイクスピアの新作を作りなさい。無条件で招待するから」
とのことでした。
ほかにも著名な評論家の方々がいらっしゃったと思います。

ロビーで挨拶をしていると、お客さまはやや遠慮がちにそれでも話しかけてくださり、
「話はわかりましたか?」との問いに、
「もちろんよくわかった」
「雪だるま式に話がふくらんでいくのが興味深かった」
「これが日本的な物語の運び方なのね」
といった感想が寄せられました。

12月には、アサヒ・アートスクエア(東京)で凱旋公演いたします。
詳細が決まりましたらホームページでお知らせしますので、楽しみにお待ちください。


安田雅弘

11/06/10

傾城反魂香/ルーマニア

ブカレスト劇場入り

今回、字幕オペ担当の谷です。
本日、ブカレストのオデオン劇場に小屋入りしました。

ここは歴史のある古い劇場なのですが、屋根が電動でスライドし、野外劇場にもなるんです。ぶったまげました。

順調に仕込みを終え、役者さんたちは明日に備えて早めに上がりました。
残った劇団スタッフは作業を終えたあと、劇場の近くのレストランで食事をしたのですが、このレストランが暗い暗い。

ここだけじゃなく、ルーマニアのレストランは大概暗い。

メニューが見づらいので、ペンライト使いました。舞台裏以外でもペンライトが役立つなんて。

スタッフのみでの食事会は、ツアー中なかったので、何か新鮮な感じがしました。

明日はルーマニアツアー千秋楽。
ぶちかましましょう!


谷 洋介

Top «« 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 .. »» Last