13/12/04
『わたしの稽古場』
「よく そんなにたくさん台詞喋れるね」
「間違えずに覚えてるね 凄いね 感心する」
と友人に言われる。
うん、それはね、もの凄く練習するからですよ。
人生の半分演劇と関わってきて、出来ることも増えてきたけど、台本を渡された瞬間に覚える、そんな素晴らしい能力は身につかないので、とにかく何度も何度も読むという直球方式だ。
夢の中でも、朝起きた瞬間でも、ぼーっとしているときでも、無意識の瞬間でも、いつでも台詞が出てくるよう身体に染みるまで読みまくる。
俳優によって覚え方はいろいろあるかと思う。車の中でとか、自転車こぎながらとか、ご飯食べながらとか、お風呂の中でとか…でも私は声に出し、さらに動きながらでないと覚えられない。そして、歩きながらブツブツ台詞を唱える方法が一番いい。
かなり大声でブツブツ言うので怪しいらしく、すれ違った人によく振り向かれる(笑)
(すれ違ったことある方ごめんなさい! )
お恥ずかしながら小学生の頃から演劇をやっているが、その頃から覚える方法は歩きながらブツブツ言うことで、もうそれが変えられない。そして、昔から坂の多いところに住んでいたので、坂道で声を出すことが馴染んでいて、坂道が一番覚えやすい。
今住んでいるところも坂道だらけ。山に囲まれていて夜になると真っ暗でとても危険な道。怪しい人につけられたりとか、振り向くと全裸の人がいたりとか、何度か怖い目にあったこともある。なので、自分の身を守るためにも、帰りにその坂道を通る時は全力で台詞を言う。情念とか怨みのこもった恐ろしい台詞はもってこいだ、誰も近寄らない(笑)。この坂道はいつの間にか私の一番の稽古場にもなっている。
最近発見したのはただ覚えるには下り坂がベストだということ。うる覚えだから台本をチラチラ見つつ、前から来る人や障害物にもぶつかならないように前方も視野に入れながら歩くには、下り坂がベスト!!
台本を手放して言えるようになったら上り坂が良い! だんだん息切れして苦しいが、それを利用して長台詞の稽古をする。一息でどこまで台詞を言えるか。どこで息を継げばいいか。走ったりしなくても、息が上がってくるので、身体がぎりぎりの状態の時に出る声が発見できたりもする。
そんな感じでいつも通る坂道。この坂道、高校の演劇部時代から通っていて、その当時は友人とよく台詞を合わせていた。余計な事を考えずとにかく声を出し、台詞言うのが楽しかった。笑いながらよく稽古していたな。台詞もどんどん覚えていた。
いつもの道を通り、そんな無邪気に演劇と戯れていた自分の姿に出会う。なんだかあの頃のほうが声が通ってた気がするなぁ…。だんだんといろいろな技術や知識がついてきたけどとっても大事なことを捨ててしまっていたような気がする。無邪気に演劇に向かう、これが台詞を覚えるにも一番近道だよな。
変わらない道を歩きながら変わってしまった自分に気づいた今日この頃でした。
山口笑美