14/07/04
『よろこび』
やっぱり、舞台にあがれることはいくつもの条件が重なった幸運なことと考えたい、と思う。
日常と違う世界を創造し、そこでいきいきとする。そしてお客さんを楽しませる。こんな贅沢な生き方はない。もちろんそのために犠牲にするものは人それぞれある。好きなことやって、楽しい毎日、では全然ない。
なんで演劇にこだわるのだろう。舞台を続けたいのだろう。
舞台にあがっているその時にそれ以外では得られない自由なり、快感なり、生きている実感なり、とにかく何か特別な感覚をおぼえるからではないだろうか。
えらい普通のことを書いてしまっているが、その感覚を見失ったならもう本当に、続けていく意味はないはずだ。なのだが、どうにも… 苦しい。えらい苦しい。このままでそんな感覚に至れるのだろうか。
『にごりえ』 の主人公お力も謂わば役者なんだと思う。菊の井という舞台で毎晩大活躍している女優なのだ。彼女が犠牲にし捨ててきたものは現代の私たちなんかより切実で哀しく、時々逃げ出したりもする。しかしお力の人生は不幸だったのかというと… そうでもない気がする。
安田には毎日のように「お前たちには憂鬱が足りない! 」 と言われるが、否、真意はその先の喜びへの欲求が足りないということなのだろう。
本番まで残りわずか。何を積み重ねられるかだ。
何とか、何とかして、見つけたい、演劇の喜びを。
越谷真美