08/09/09
「ロミジュリと選曲」
ども、山田宏平です。
今年は山の手事情社の公演に参加していませんが、
いろいろな舞台に出たり、俳優トレーナーや
音楽大学のミュージカルコースで演技講師をしたり
しています。
以前茨城県の水戸芸術館(ACM)プロデュースで
安田演出・水戸市民50名出演の野外劇
「ロミオとジュリエット」を上演したことが
あります。
山本さんはじめとする劇団主力陣が、
総出でアシストして創り上げた50名の迫力ある
舞台は今でも忘れられません。
僕の本格的舞台選曲家デビューもこの作品でした。
オリビア・ハッセー主演の
「ロミオとジュリエット」のニーノ・ロータの
音楽が大好きだった僕は、本家を超えよう、
選曲家として名を挙げてやろうと、どこでも
安田の構成台本を手にし、何度も口にしながら、
本当に寝食を忘れてプランを練っていました。
その努力の結果、もうどこからどう聴いても完璧!
というハウスミュージックを主とした、
90分のサウンドトラックが完成しました。
セリフの変わり目と音楽の変わり目の絶妙な一致に
より起こる化学変化、それを耳にした安田さんの
恍惚の表情、市民の興奮、俳優たちはビートに
よって演技を導かれ、やがてそれは伝説へ…
なんていう完璧な様子を思い浮かべながら
意気揚々と現地入りし、早速通し稽古に合わせて
かけてみました。
結果は…惨敗。
俳優たちの演技は僕の頭の中で思い描いていた演技
と全く違うし、何より僕のプラン
(ハウス・テクノ中心)の「クールでアッパー」な
空気が、水戸市民の未完だけれどとても情熱的な
演技とまーったく噛み合わない。
当然、プランはボツ。
それから本番までの10日間、滝のような汗と
血のような涙の日々が続きました。
最終的な選曲は観客にも出演者にも好評で、
ああ、やってよかったと心から思ったことと、
しばらくの間、最初のひとりよがりな選曲を思い
出しては恥ずかしくなったことを覚えています。
このときに学んだことが、
今の活動をする上で大きく影響しています。
空想せず、目の前にあるものに思いを馳せて
つくること。
自分の美学や思い込みに囚わないこと。
自分が、ではなく、共演者や観客が
気持ちよくなることを喜びとすること。
いつ・どこで・誰と・何を・何の目的でつくるかを
大事にすること。などなど。
ロミオとジュリエットはそういう意味で、僕の大き
なターニング・ポイントのひとつといえる作品です。
10月の山の手が今回どういう料理をするか、
身内ながら楽しみです。
選曲はいつもの斉見浩平さん。
俳優のやろうとすることを3割増しで観客に美味
しく伝える的確な選曲は今回も健在なはずです。
お楽しみに!
山田宏平