08/05/13

摂州合邦辻

相模大野

私の地元、町田のお隣です。
懐かしい匂いがプンプンします。ですが私、
相模大野駅は1回も降りた事がありませんでした。
いえ、正確には改札を出た事がなかった、です。
小田急線は相模大野駅で分岐します。
左の路線は藤沢・江ノ島へ。
右の路線は小田原・箱根へ。
ここでよく電車を乗り間違え、引き返したものです。

そんな相模大野。
街は充実しています。町田もしかり。
デパートも飲食店も薬局も充実しているので、
わざわざ新宿に出る必要はありません。
十分に楽しめる街です。

地元の方がイキイキと生活している街。
今回はその街の中の劇場でお芝居をします。

合邦お父さんの家庭が、崩れていきます。
娘は義理の息子を追いかけ回し、
妻は混乱して踊り狂います。
合邦お父さん自身も混乱し、娘を犯す妄想に
取り憑かれます。
犬たちが人間の混乱を手招きします。
様々な愛情がねじ曲がってしまった結果です。
この『摂州合邦辻』は、山の手事情社独自の
解釈なので、実際のお話とはちょっと違います。

この街の中で、もしあの家庭が本当にあったら。
観劇後、そんな思いを巡らしながら歩いてみてください。
きっとあなたの印象に残る街になると思います。

以上、相模大野と演劇を結びつける会 会長
水寄真弓でした。

08/05/12

摂州合邦辻

熟成の時間

お芝居には再演ということがあって、
そのたびにマイナーチェンジをを重ねながら
作品が熟成していく過程があります。
テレビや映画のリメイクとは違って、
こういう作りこみ方は、演劇ならではの贅沢だと
つくづく思います。

昨年秋の三本立てでいえば、
『傾城反魂香』と『道成寺』は再演で、
『摂州合邦辻』は初演でした。

『傾城反魂香』は10年前に初演したものですが、
あらためて作り直してみると、
美術や演技プランに思ったほど
古びた感じがありませんでした。
手前味噌にいえば、10年前に、
ある程度の普遍性をもった表現が
できていたということかもしれませんし、
いじわるに考えれば、あまり進歩していない
ということなのかもしれません。

それでも個々の演技はかなり変わったと思いますし、
台本の読み方もかつてよりは
深くなった気がしたものです。

『摂州合邦辻』はまだ半年しかたっていませんが、
それでも再演ということになると、
作っていたときとは距離をおける分だけ、
見えてくることもあるように思います。

「あぁ、あの演技ってそういう意味があったのか」
「よく考えるとあの道具、変だよな」
ということが出てくるのです。
先日も初演の記録DVDを見た後で、
そうしたことが何点か出てきました。

作っているときとは、勢いが先行するもので、
それがまた初演の初々しい魅力に
つながっているのですが、
再演になると少し視点が落ち着くのです。

当初、半年ではあまり変わらないだろう
と思っていましたが、
本番中でも初日と楽日では作品の印象が
微妙に変わるものなので、
半年間とはいえ、視点の変化はあるものなのだと少々驚き、
創作の可能性にあらためて目をみはる思いでした。
演劇をなめてはいけません。

稽古とともに細かい検証作業が再開しています。
演技はもちろんですが、
美術や衣裳も相当変わると思います。
初演をご覧になったお客様も、
相模大野の、私たちにとっては初めての劇場で
是非それを確かめていただければと思います。

安田雅弘

08/05/11

摂州合邦辻

東京観光

突然ですが、私の妹は人形をつくっていまして、ボストンで売られています。
先日、ボストンでその人形を買ったフィールド氏が来日するということで、妹が私に泣きついてきました。
「みっちゃん、一緒に東京を案内しよう」

身長2メートルはあろうかという、熊さんのようなフィールド氏と、通訳の才女と、妹と、私の珍道中は、思惑どおりいかないチグハグな旅で、ちょっとここに書ききれないのですが。

どうやらフィールド氏は科学者で、どうやら世界的な権威で、光を分ける研究をしていらっしゃるようです。
(通訳才女に説明してもらったけど、よくわからなかった)

彼はその図体に似合わず、妹の人形を見ると、うっとりして「ビューティホー…」とつぶやきます。

世界的な権威と、一緒にお蕎麦を食べたり、歌舞伎のチケットを取るのに階段に座ったり、公園でさくらんぼを食べながら猫を観察したり、

これはなんなのだ?といえば、妹の作品の力なのだとハタと気づき、
ムラムラと闘争心が。

演劇だって負けねぇ。

先日『摂州合邦辻』赤坂公演のビデオを見て、一旦逝去した私ですが、
ちょっとづつ再生中です。

大久保美智子