13/03/14

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「男だからこそ」

ちょっくら稽古場にお邪魔してきた。

シーンの稽古が見られるかと思ったが、基礎稽古に一時間半もかかっている。
しかも、何をやっていたかというと、軽く発声練習の後、二人組みになって片方がもう片方の腕を掴み、グネグネ動かすだけのことである。
それを30分以上もグネグネやっている。しかも汗だくだ。
どうやら《四畳半》の身体の動かし方について検証しているらしい。

それ私にも教えてよ! と心の中で呟きながら見ていると、本当に些細な動きで
「あ、いまのはちょっと違った」
とか
「それじゃ左半分が硬直しちゃってるよ」
などと言っている。
なんて繊細で緻密なんだ!!

普段は若いもんがいて足を引っ張るから、その修正だけで時間がかかってしまうのだが、今回は先輩方だけの男4人芝居である。
安田氏の演出にも力が入るようだ。
気づけば一緒にやっている。
確かに、身体の動きの根源を探ろうというのだから生半可なことではない。
しかも今まで動いてきた仕組みとは違う論理で身体を動かそうとするのだから。
皆、40代の良いお年をした方々なのに、ちょっとした身体の情報をのがすまいと周りに集中するあまり、まるで少年ような顔つきになっている。
その様子に、不謹慎ではあるのだが、なんだかおかしくなってしまった。

「ひかりごけ」の戯曲も男しか出てこないが、男にしかわからない心情といったものがあるのではないか? と思う。
例えばもし、遭難したのが男でなく女だったら?
小さい子供のいる母親だったら食べるかもしれないが、多分死んだ仲間の親の顔等が浮かんできて、そこまでして自分が生きたいと思わないのではないだろうか?
男だからこそ、このような状態に陥ったというところが見たい。

私も、楽しみな公演である。

三井穂高

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
詳細は、こちらからどうぞ。
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13/03/13

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「7号食」

3月3日のひな祭り、稽古が休みだったのだが、ふと、ダイエットするか。
と思い立つ。
BOOK OFFに行って、関連書籍をぱらぱら見ていると、ハイパーメディアクリエイター高城剛の書籍に目が止まる。
そして、これにするかと決めたのが。
「7号食」というやつである。
これは、玄米だけを10日間、食べ続けるというもので、他に食べていいのは、ごま塩だけ。
飲んでいいのは、水かお茶だけ。
ちなみに「8号食」は断食である。
断食までいくと、リアル「ひかりごけ」な気分が味わえるのだが、ここまでやると、稽古と日常生活に支障をきたしそうなので、やめておく。
その「7号食」だが、かれこれ5日目に突入した。
ごま塩の消費量が半端ない。
この稽古場日誌が掲載されるころには、挫折して肉を食ってしまったのか、それともやりおおせたのか判明している。

稽古では、演出・安田から叱咤という名の怒声を浴び、腹の虫が暴れ、飢えて、人の肉を食って、精神に失調をきたし、最後には自殺する役の内部に飛び込もうと、七転八倒していると、海の底に潜って、遠くから人の声が聞こえてくるような感覚になる。
これは、夢の世界か、それとも、三途の川を渡りかかっているのか。
視界に入る、浦さんや、川村さんもとんでもないことになっていたりするので、お互い様か。

間もなく本番です。お楽しみに。

斉木和洋

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
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13/03/12

ひかりごけ

「ひかりごけ」稽古場日誌/「男の美学」

私は男性が苦しみ痛む姿を見るのが好きだ。
情けなくて、愛おしくてたまらない。
日常ではあまり見ることは出来ない姿。
しかし舞台上では遠慮なく見放題である。
これぞ演劇の醍醐味。
今回の「ひかりごけ」登場人物は全員男性で、
そして見事に皆苦しんでいる。

稽古を見学した際、劇中では盛んに「我慢している」という台詞が繰り返されていた。
私はふと、この「我慢している」というのは男の美学なんじゃないかと思った。
男性は女性よりも肉体的な痛みや苦しみが得意でない気がする。
その苦手な痛みを自分の中に一生懸命に閉じ込め、
女性の様にヒステリックには叫ばず泣かず、
「我慢する」と、あえて言葉にして言う。
男のやせ我慢、強がりというか誇りというか。男らしいな、と思う。
本当は全然違う解釈かもしれないけれど、
その美学が狂気に変わっていく様が私には垣間見えて、ゾクゾクした。

目の前では斉木さん演ずる西川と、浦さん演ずる船長が、それぞれ空腹と様々な想いに苦しんでいる。
そして船長は西川に向って「俺は我慢している」というのだ。

・・・いいぞいいぞ。

痛め、苦しめ、四人の愛しい男ども。
私はこっそり、ほくそ笑みながら本番を楽しみしている。

園田恵

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山の手事情社公演「ひかりごけ」
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