12/10/24
演劇セラピー
世間には秋が訪れているが、山の手事情社は現在戦争の真っ只中である。
演出、舞台美術、衣裳、もちろん俳優の演技、それぞれが大詰めを迎えている。
ところで、私事だが、2年ほど前ヒプノセラピー(前世療法)を受けにいった。
ひどく病んでいたので。
催眠状態に誘導され、自ら語ったところによると私の前世はドイツ人男性で、牢獄に入れられていたらしい。
今となると笑い話だが、当時は自分の知らない存在が自分の中にいると知らされ、なんだかほっとしたのをおぼえている。
自分すら知らない誰かが、自分の中にいる。
そこは信じていいところ。
つまり、私の中にはギリシア人もトロイ人もいる。
最近はもっぱら自分の中のギリシア人を探している。
衣裳作業に追われるギリシア人
忙しすぎてごはんを食べる時間のないギリシア人
演出家に怒鳴られるギリシア人
後輩にバカにされるギリシア人
にぶいギリシア人
眠いギリシア人
怒るギリシア人
・・・
あぁ、私は誰、ここはどこ。
自分とはなんと実態のないものか。
なのに、演じようとすると自分がむくむく出てきて邪魔をする。
厄介だが、そこが面白いところでもある。
『トロイラスとクレシダ』という作品の中には、本当にいろんな人物が登場する。
舞台の上で動き回る登場人物たちは、果たして自分の中にもいる人だろうか。
知らない自分を発見できるだろうか。
そんな風に見ていただけると幸いです。
安部みはる