12/09/19

トロイラスとクレシダ

間違っているかもしれないけど

朝晩は大分過ごしやすくなりましたが、まだまだ暑い日が続いていますね。お元気ですか?
山口笑美です(^-^*)/

10月公演久々の新作です!!
そしてクセあり作品
『トロイラスとクレシダ』

まだまだ雲をつかむような状態ですが、僅かなキーワードからネタ出し作業に必死の日々です。

先日は演出の安田から
「作ってほしいショートシーンのイメージを伝えるから」
ということだったのでどんなイメージ来るかワクワクしていたら、
「トロイ側の女とギリシア側の女のシーンを作ってほしい。犬でもあってもカラスであっても良いね。明日見るから」
とのこと。

なんじゃそりゃー
それってなんでも良いってことじゃないかよーそういうのが一番難しいんだよー

と咽まで出かかりましたがぐっと押さえ、
脳みそフル回転させ、チームでイメージを出し合う。

不思議とイメージシーンが次々出てきました。

砂を亡くなった人の灰にみたて過去を語る女性達

犬のように乱暴に靴を口で拾い上げる女性達

大量に玉葱を切って、見ている人を涙目にさせながらハンバーグを作る女性達

カラスのようにゴミを分別する女性達

などなど
どのネタが本番にのるかまだ分からないので全ては言えませんが、

演出側のまだ形になっていない感覚と俳優達の感覚が近づいている感じがしてきました。

もしかして今やっていることは全て間違っているかもしれないけれど
そんなことはあまり考えず
今の感覚を信じて突っ走ろうと思います!

『トロイラスとクレシダ』新しい山の手ワールドが出来上がりそうな予感。
ちょっとワクワクしてきました!!

山口笑美


12/09/18

女殺油地獄(ルーマニア)

9月17日UP 番外編日誌  突然の訪問者(7月13日)

「明日、キリアック氏が稽古を見学したいそうです」
稽古場でダリアから告げられたのが昨日のこと。
また急な。総監督キリアック氏が稽古総見するのは20
日と決められている。あと1週間ある。
「まだできてないけど…」
「できているところまででいいそうです」
「でも、通し稽古がいいんでしょ?」
「それは、まぁ」
まだ、毎日通し稽古というところまでこぎつけていな
い。しかし予定変更。
当然かもしれない。20日の総見が終わったら俳優はバ
カンス、私たちは一旦帰国。20日に見て、どうなって
るんだこれ、という場合取り返しがつかない。聞けば
ダビジャの「プラトーノフ」も見るという。劇場側と
してはそれだけ秋の新作に期待をかけ、慎重でもある
ということか。

俳優たちが明らかにそわそわしている。ヌキ稽古で少
しダメを出すとヴェロニカは泣き出す。総監督まだ来
てないよ。どれだけ神経質になってるんだ。今までさ
んざんやれと言ってきたのに、そぶりさえなかった自
主稽古が2階で始まっているという報告。なんじゃそ
りゃ、おそいおそいそんな付け焼刃、いまさらやった
って…。ただ彼らの慌てふためきぶりというか、素直
すぎる焦り方があまりにほほえましく、ボク自身逆に
落ち着く。
まぁ、やるだけのことはやってきてるし、できている
ところまで見せるしかない。
19:30開始ということで休憩に入ったが、休憩あけを待
たずに発声練習を始める一群。ばっかじゃなかろか。
スタッフと目を合わせて笑いをかみ殺す。そんな俳優
たちを尻目にオレは平常心だぜと与兵衛のチピリアン
は相変わらず横になっている。
定刻過ぎに昨日までのバカンスで真っ黒に日焼けした
キリアック氏がテニスシューズに短パンポロシャツと
いうひどくくつろいだ姿で登場。なぜか顔を見知った
他のスタッフも続々と入場。照明、音響、広報、マー
ケティング、ポスターのデザイナーまで。あれ、今日
そういう日なの?
スンジアナが「こんにちはキリアックさん」と挨拶す
るも無視され、関係者から笑いが漏れる。

「はい、じゃどうぞ」と言って通し稽古を始めた。
俳優たちは緊張のためかミスを多発。チピリアンがポ
カ、あえなく平常心のメッキがはがれる。それにして
もどうやって完成度を上げよう。キリアック氏の顔色
より、初日に客席を埋めるであろうシビウの観客を思
って冷や汗が出る。何を、どこから手をつければいい
のか…。
1時間25分ほどで終了。
「みんないるか」と休憩から戻った俳優たちを睨め回
し、キリアック氏よりダメ出し。私に、ではなく劇団
の俳優たちにダメを出す。確認するようにときどきこ
ちらを窺う。
以下羅列。…ディアナとラルーカはよかった。ダナは
声が嗄れてる。チピリアンには言いたいことが山ほど
ある。フローリンは前半よかったが後半息切れしてる。
アドリアンもいい所と悪い所がある。こんなに鍛えて
もらう機会はないぞ。技術を身につけろ。役者として
大きな武器になる。これは世界的な水準の指導だぞ。
身体を重く使え、軽く使うな。すべての登場人物の輪
郭をしっかりしろ。緊張とリラックスを同時に行わな
ければならないすごいシステムだ。1時間半だろ、エネ
ルギーを維持しろよ。ヴィオレルは何だ、お前の芝居
はコントか。時間はお前らの味方じゃない。すごいチ
ャレンジだぞ。奇跡が起こるか、クズか、どちらかだ。
ヤスダの言うことを聞いて奇跡を起こせ!
こちらにとても気を遣いつつ、俳優を激励している。
それにしても、「奇跡を起こせ」にはモーセもびっくりだ。

※写真説明
1枚目
「豊島屋七左衛門」役のアドリアンと
与兵衛の母「お沢」役のダナ。

2枚目
与兵衛の伯父「山本森右衛門」役のヴィオレルと
与兵衛の惚れている遊女「小菊」役のラルーカ。

3枚目
通し稽古風景。与兵衛と蝋九の喧嘩の前。

12/09/17

トロイラスとクレシダ

玉堤一丁目の夕日

『トロイラスとクレシダ』稽古に励んでいます。
二階にある第2スタジオで、チームのメンバーと《ルパム》(山の手事情社のオリジナルダンスシーン)作り。
トロイ戦争が物語の舞台となっているので、《ルパム》も「戦い」をテーマに製作。

「よし、戦いのルパムだから、とりあえず相撲を取ろう」
と誰かが言えば、メンバー入り乱れて相撲大会。 男優女優関係無く。 全員30代。 真っ昼間から。 外は33℃。 大の大人が取りも取ったり。 負けず嫌いだから腕に噛みついたり。
一通り終わると、
「ハァ。よし、見えてきたな。ハアハァ。ゼエゼェ。」
本当か?
でも悩んでる時間はありません。 その動きを元に様々な加工をして、『ルパム』の形にしていきます。
行き詰まったら、原点に戻りまた相撲。 これ大事。
そんなアラサー相撲大会から出来た《ルパム》がどう仕上がっているかは、劇場でのお楽しみ。

時間が経って、
「ハァ。少し休憩ハァ、しようゼェ。」
と空気の入れ換えで窓を開けると、昼間から始めた稽古がいつの間にか夕方に。
多摩川の彼方に落ちていく夕日がキレイです。
心も身体もリフレッシュしたい、こんな時は炭酸です。
サイダーを飲み、夕日を眺めているとお祖母ちゃん家の縁側を思い出します。 完全に昭和感。
「豆腐屋のラッパでも聞こえてきそうだな。」
と思っていると、
『パアッパア?プゥ?』
と、調子ハズレなラッパの音。
「あれ、これは…ラッパは外で鳴っているんじゃない、1スタで鳴っているんだ!!」
そう、一階にある第1スタジオで行われている台本の読み合わせ稽古、その途中にある出陣シーンで鳴るラッパの音を、演出助手の小笠原くみこが「口で」出しているのでした。
『パアッパア?プゥ?』
「お、また出陣だ。」
『プゥ?プゥ?パアッ!』
「お、これは…? あ、ラッパの音にダメ出しが入ったんだ!」
そう、口ラッパの音にも演出が入ります。

沈む夕日に別れを告げ、僕達もまた相撲大会、いや、《ルパム》製作に戻ります。
こうして(?)劇団員総動員で創られる『トロイラスとクレシダ』見たこともないシェイクスピア劇が出来上がりそうな予感です。

文秉泰