10/05/23

オイディプス王

日誌

川村を殺すシーンで、川村が予定外にしぶとく絡み付いてなかなか倒れないのでこちらも予定外に膝蹴りを食らわして倒そうとしたらホントに下腹に当たって鈍い音がした。

浦を殺してとどめを刺すところで、浦が稽古前に「俺ちょっと粘りますんで、もう一発下さい」と言うのでその通りにしてあげたらハンマーの柄があばらの間に入りそうになった。

新人の文を殺すところで、文の倒れ方が中途半端だったので、予定外にもう一発食らわそうとしてハンマーを振りかざしたら顎に直撃し、カツッという骨に直撃する音がした。

岩淵を倒すところで、自分の体が前傾しすぎてしまい、回転受け身をする岩淵が下から跳ね上げる脚が俺の鼻先をかすめ、眼球に当たって大怪我をするところだった。

斉木を倒すところで、ハンマーを背中で寸止めにするつもりが床が滑って体ごと斉木にぶつかりそうになり、2?の鉄塊が付いているハンマーなので無理に止めると自分の体が壊れてしまうと思い、仕方なく斉木の背中でブレーキをかけたら重たいものが肉に食い込む感触がした。


山本芳郎

10/05/22

オイディプス王

がんばろう女

昨日の帰りの電車でのこと。
頭が悪いふりをして実は頭のいいんじゃないか
と思われる横山めぐみ似(だと私は思っている)の
若手劇団員、永里子から芝居の進捗について聞かれた。
返答に窮した私は、まだ関係が見えてこないと答えた。

今日は通しであった。

確かにまだ関係が薄い。
そして起こるべきことが起きてこない。

オイディプス王は真実に目をそむけず、
そこにたどりつき、自分の目をつぶす。
妃イオカステは真実を前に死を選ぶ。

女という生き物は、都合の悪い真実を見ないふりをして
生きていくことができるのかもしれない。

しかし、イオカステはオイディプスの破滅を見ることに
耐えられず死に逃げてしまう。

オイディプスは目を潰したものの生き続ける。

なぜ?
現代を生きる自分の中に答えを探す。
古代ギリシャと現代日本が交錯する。

今が一番つらい時期かもしれないが、
ここが俳優という仕事で一番面白い作業でもあるのだ。
がんばろう。

さて、永里子からの
「淳子さんって誰に似てるって言われますか?」
の問いに調子に乗っていろんな人の名前を出して
いたら、電車で向かいに座っていた人から、
「そおかあっ!?」という顔で見られた。

倉品淳子

10/05/21

オイディプス王

髪はおんなの

山の手のオイディプスといえば、髪の毛をひっぱられる芝居である。

いたいけな女子の美しい髪を、運命役の男どもが荒々しく握り、ひっぱる。
おかげでわたくしの貴重な毛髪が、どんどん抜けていくのである。
稽古場を掃き清めると、なんじゃこりゃ!?という量の毛髪が箒にからまっている。おそろしい。

30を過ぎて髪フサフサの川村君が隣にいた。
「岳ちゃん、髪の毛いっぱいあるね。いいな~」
「いや、毛、減りました」
「うそだ。すっごいいっぱいあるよ?」
「見てくださいこの辺、薄くないっすか?」

まったくフッサフサである。

「薄くないよ」
「減ったんですよ!ほんとに!」

意味わからん。

「俺、今、髪の毛減ってきたけど、むかしは大変だったんだなって…」

どうでもいいや。

確かにむかしは髪の毛もっこりしてたよな。
でも今もじゅうぶんもっこりしてるぜ。

私がオイディプスをできなくなるのは、
体がキレないとか、芝居がダメだとか、白ワンピは厳しいとかではなく、毛髪の不足によるのではないかと、密かに恐怖している。

大久保美智子

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