09/06/26

タイタス/ルーマニア

途上

ツアーの先々で会った人々の素晴らしい厚意や、
ラドゥ・スタンカ劇場やアリエル劇場など
ルーマニア演劇のレベルの高さ・環境のよさや、
スタッフ・劇団員・研修生たちの献身的なサポートに
ついてはきっと誰かが書いてくれるでしょうから、
僕は自分のことを。

ああ、途上だなと実感したツアーでした。

旅のあいだ、サターナイナスという役を通じて、もの凄くいろいろなことをいつもより深く長く考えさせられました。

身体の使い方について、声の響かせ方について、
キャラクターの作り方、演技の組み立て方、
観客への見せ方
いま自分がやっていることでは何故いけないのか、
足りないのか
何がこの作品に、あるいはこのスタイルに必要なのか不要なのか、何故必要だったり不要だったりするのか
いまやっていることは面白いのか面白くないのか、
観客にとって俺は面白いのか面白くないのか、自分のなかでは面白いのかどうなのか
劇的なスローモーションとは何か、止めているけど
内側は凄く動的な状態とはどんなか
相手役に語るってどんな状態のことなのか、観客と
関係を持つってどんな状態のことなのか
リラックスとは何か、集中とは何か
観客の想像力を喚起するってどんなことか、魂の入った状態ってどんななのか
演出家や共演者のアドバイスに耳を傾けることが
どれだけ大事か、傾けつつも自分のインスピレーションに従うことを諦めないことがどれだけ大事か

演劇とは何か、自分にとっての演劇って何なのか
あれは演劇か、これは演劇か、演劇じゃないとしたら
何なのか
自分の好きなことや自分の正しいと思っていることは
何か、それらはやるべきことなのか、やっても許される
ことなのか

今まで考えてきたり実践していたことじゃ足りないんじゃないかという不安のなかで、とにかくいろいろなことを
実践し、考えまくったのだけれど、そして
いろいろな言葉や感覚に辿り着いた気が
するのだけれど、

…なんだろう、書けば書くほど自分の心中から遠ざかるこの感じ。

それはきっとまだ途上だからで、
途上と感じられるということはある道を
進んでいるわけで、
つまりはタイタスのルーマニアツアーは終わった
けれど、僕の旅はまだまだ続いているわけで、
答らしきものが出るまでは
「こんな問題を見つけました。問題に向かうことは
幸せですが答はまだ出せていません」
という報告しか出来ないのだなと。

それでも、いくつか答らしきものは出ました。

ひとつは、自分が山の手事情社で育ったことを認めたり誇ったりしてもいいのではないか、ということ。
ここ数年いろいろな理由から、ちょっと過剰なくらいに
「山の手を尊敬しつつも、方法論としては山の手が
やっていないことをする」ことを自分に課していたの
だけれど、もうそうしなくてもいいのではないかなと
思うようになりました。
つまり、以前ほど密接でなくても僕は山の手の
人間だし、僕にとってのルーツ(土台)は山の手だし、
思想的にも演技的にもここが唯一のホームなのだと
認めること(つまりありのままの自分を認めること)を
しないと、これから出会うであろう他の方法論にも
全身で向き合うことは出来ないのだと、ようやく
気付きました。

もうひとつは、俳優は緊張感のなかに身を置いて
ナンボだということ。
東京でも頑張っている俳優はたくさんいますが、
一方でいろいろな言い訳や妥協や手抜きで緊張感を
目減りさせている俳優もたくさんいます。
僕なんかも後者の一員で。
真剣にやってるような顔をしていても、この程度の
プレッシャーをキツいと感じただから、今より上の
レベルに行くなんて到底夢のまた夢で。
こんな僕でもこのツアーのような緊張感のある土俵で
手を抜かず言い訳をせず逃げ道をつくらず向き合う
ことで、少しは真剣勝負が出来たという手ごたえを
感じることは出来たのだから、東京に帰ってもそのことを
忘れないようにしないと話にならないわけです。

まとめると、自分としてはこのツアーで結果を出せた
わけではないけれど、次の扉への地図は手にしたぞ、
という気分です。
次の何年かが僕にとって勝負なのだと思います。

そしてたぶん、山の手にも似たようなことが
言えるのではないかと。

これからの山の手事情社やメンバーの活動を、
どうかお見守り下さい。


山田宏平

09/06/25

タイタス/ルーマニア

気まずいながらも楽しいツアー

ルーマニアツアーで、男2人がダブルベットで一緒に
寝るというなんとも気まずい感じを初めて体験した
野々下です。

大の男がシングルベットと変わらない大きさのベットに枕を並べ、1つの毛布で寝るんですからたまりません。
真夜中に目が覚めるとパートナーの顔が眼の前に
あってびっくりしたり、
朝起きた時には
「昨日布団脱いでたよ」とか、
「うなされてたけど大丈夫?」とか、
同棲したてのカップルのような会話が交わされたりしていました。

そんな気まずいながらも楽しい今回のツアーは20名
以上の大所帯。
そしてメンバー全員がホームでない場所で、
自分のいつものやり方ができない中、それぞれの
職能を全うして、自分たちの表現を成立させるために
工夫しながら闘っていたと思います。

今回のツアー最初の公演地シビウでは、そのことが
いかに大変か、そしてそれを普通にこなしている
ヨーロッパの演劇人の強さをひしひしと感じました。

ただ凄いとは思うが負けてはいないなとも思いました。

舞台監督さん、音響さん、照明さん、演出など
はたから見ていても譲るとこは譲り、合わせるとこは
合わせながらもしっかりと自分の表現を成立させる
べく、ときにフレンドリーに、ときに火花を散らせ
ながら現地スタッフと協力して仕込んでいましたし、
役者はシビウ、ルム二ク・ブルチャ、ブカレストと移動
するたびに広さも雰囲気も全く違う劇場に自分たちの
芝居を合わせるため、短時間で多くの点を修正する
必要があったので、現場での対応力と、搬入、仕込み、
本番を1日でやるために必要な精神力と体力が
試されました。

今回の海外公演の経験からそれぞれが得る成果は
すぐに出るものではないでしょうが、かならず集団と
作品を変えると思います。

ですので、その成果を日本のお客様に確認して
いただける機会が早く来ること心待ちにしながら、
現在のホーム仙台で自分の表現を成立させるために
譲ったり、闘ったりしていきたいと思います。


野々下 孝

09/06/24

タイタス/ルーマニア

無事に終わってよかったが・・

今回のルーマニアツアーは今までの海外ツアーの
中でもとりわけ長く、乗り打ちの公演もなんとかこなした
ハードなスケジュールでしたが、たくさんの観客の方に
見ていただいた上、反応は非常に好評で、今後に
つながる大きな成果が期待できる公演だったと思います。

すべての公演でほぼオールスタンディングの
カーテンコール。
日本ではなかなか味わえない嬉しさでした。

字幕があるとはいえ言葉のわからない芝居をじっくり
見入ってくれている感じは、舞台上にもひしひしと
伝わりましたし、そういった静かな熱気がまた芝居を
少しづつ育てていってくれてた気がします。

ありがたいです。

ただやや不遜な言い方をすれば、この大絶賛も半分
くらいはお愛想として受け取るべきだろうと
思っています。
このくらいの絶賛は僕は予想済みでした。
なぜならあちらの世界とはまったく異質な演技形態
だからです。
あきらかに練習の足りない魂の抜けたような芝居なら
ともかく、遠いアジアからはるばる来た劇団がまったく
見慣れない芝居をしそれなりに訓練のあとが見え
90分熱演していれば惜しみない拍手をしてくれるのは
普通だと思います。
決して僕らの演技力そのものが大きく評価された
わけではないし、「四畳半」の芝居が彼らの演劇観を
ゆさぶり衝撃を与えるところまでは至っていないのだと
思います。

彼らが惜しみない拍手をくれるのは、芝居が面白かった
からであることはもちろんですが、一方で彼らの文化の
演劇世界が盤石だからです。

演技の質がもっと上がり厳しい批評の眼にもかなう
芝居になって今よりもっと大きな衝撃を与えるように
なったとすれば、たぶんもっと大きな絶賛とともに
たくさんの悪評やバッシングも受けることになるでしょう。

まだまだこれからです。

機会があればぜひまた参加させてもらいたいものです。
そのときはできれば日本の古典を持っていきたいと
思います。
近松を知らない?鶴屋南北の名を聞いたことがない?
じゃあ、お見せしましょう!という感じで。
それが普通の国際交流だと思います。

スタッフのみなさん、手伝ってくれた劇団員と研修生のみなさんありがとうございました。


山本芳郎

Top «« 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 .. »» Last