10/09/01

凱旋2本立て公演

場当たり

山の手事情社劇場入り2日目!
本日のメインイベントは『場当たり』
場当たりとは、俳優が舞台上での演技スペースの確認をしたり、音響さんが俳優の芝居に曲を入れるタイミングを確認したり、照明さんが灯りを実際に当ててみて確認したり…まぁ、言ってみれば舞台空間とのお見合い期間の様なものです。
数か月かけて作ってきた作品も、実際上演する環境に割ける時間は僅か。否応無しに緊張が走ります。
今まで舞台の段差もなければ、暗くも無かった。慎重に自分の導線を確認する俳優達「今ぶつかった?」「じゃあ、ここから帰ろうか。」即座に変わる段取りの数々。

俳優のみならず、スタッフの皆さんもシーンの進行と共に劇場中をかけ廻っていらっしゃいました。
「客席の真ん中開けて下さ〜い」「すいません、舞台直すのに10分下さい!」迫る退館時間、次々発覚する問題達。
そんな中、演出の安田氏も負けずに質問「子供を捨てる時に何で留金を刺すのか教えて〜」今ですか…

本番まであと一日。悔いなき様、皆さん疑問をぶつけ合う激しい一日でした。

浦浜亜由子

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10/08/29

凱旋2本立て公演

七つ道具

あらゆる職業、その道のプロともなると、
はたから見て「へぇ」とか「ほぉ」とか、
驚かれたり、感心されたりする道具を持っているものだ。
おそらく、同じ職業の人たちならば、
何ら珍しいことではないのだろうけれども。

照明さんがいろいろな照明の形にくりぬかれた定規をもっていた。
図面に、そのくりぬかれたところをあてて、へりを鉛筆でなぞると、
その照明のシルエットがあらわれる。
使うあてなどないが、
ちょっとほしくなったりするのは、
文房具屋に並ぶ小物たちを見ると、
ついつい時間を費やしてしまうのと同じだ。

音響さんのデジタルメトロノームも、
専門家には、どうってことないのだろうが、驚いた。
いうなればリズム測定機。
指定したテンポで「ピッピッ」と音が出る。
かかっている音楽の速度に合わせてボタンを押すと、
1分に何拍という表示が出る。
持っていても絶〜対に使わないが、
少しほしくなったりする。

昨年、劇場の下見をしていて、
この場所に上から物を落したいんだけど、
そんな都合のいいところにバトン
(天井から吊られている照明や装置用の棒です)
あるのかぁ? とつぶやいたら、
舞台監督さんが赤外線ビームの出る水平器を出してきた。
舞台に置くと、その場所から垂直に光線が走って、
バトンの位置を検討できる。
劇場の天井は大抵高く、暗いものだからこれは便利。
いやこのご時世、あるだろうこの程度のものは。
と思い返したが、それでも物珍しさに負けて、
必要のないあちこちの水平や垂直を取ったりして叱られた。

俳優は「わたしたちは、からだひとつで」みたいな、
きどったことを、よく口にしているが、
本番が近づくと、小道具やら衣装やら
メイク用品やら、楽屋のお守りやら、
お客さまからの差し入れやら、
いろいろなものに取り囲まれて、なにやら誇らしげである。
今回のように、二本立てとなると、
それぞれかなりの量になる。

それに比べて演出の道具、貧弱だ。
ストップウォッチ…ふつうだなぁ。
その上、計測は大抵誰かにお願いしていて、手にすることもないし。
ダメ出し用の紙、パソコン。
演出ならでは、という道具ではない。

あえて挙げれば、目薬と虫刺されか。
わざわざひけらかすたぐいのもんじゃない。
でもほかに思い当たらないんですワ。
目薬はおわかりでしょう。
舞台を見て、ふてくされるのが演出というしごとだから、
どうしても目に負担がかかる。
稽古につかれたときには気分転換にもなる。
シューズのひもが解けた、
とかいって時間稼ぎするサッカー選手に似てる。

虫刺され。
この暑さで虫が大量発生、ではない。
稽古を見ていると、どういう具合か、
身体や顔がかゆくなることがある。
刺されたわけでもなく、
じんましんのように痛かったりかゆかったりするわけでもない。
身体を動かしている時なら、問題にもならないかゆさ。
ただ、じっとしていると気になる。
無視しようとすると、もっと気になる。
いらいらして、舞台で起こっていることを見落とす。
スーッと塗って問題解決。
って、ほんとにどうってことないなぁ。

安田雅弘

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10/08/25

凱旋2本立て公演

11年経って

「タイタス・アンドロニカス」も初演から11年たつ。
当時は「四畳半」もまだ生まれたばかりで、思い出深い作品だ。

再演を重ねるにつれ衣装も舞台美術もかなり変わった。
海外に持って行った今回の『タイタス」はシンプルな舞台だけれど、
初演のときは舞台真ん中に日本の古民家にあるような囲炉裏をデザインした
装置が据えられてあった。
囲炉裏の中は畳一枚くらいの広さで中にはスライム状のドロドロした透明の液体
を大量に流し込んだ池になっていた。
芝居の中で、殺された者はその池に落ちていき全身スライムまみれになって
舞台から消えていき、死んだことを表現していた。

その液体の材料は洗濯糊。当時の研修生が、いろいろと試行錯誤しながら絶妙な質感の
スライムを開発していた。
水と洗濯糊を厳密な割合で配合する。スライムがさらさらでもドロドロ過ぎてもダメで
いい感じで糸が引く状態でないとダメ。しかもそれはその日の気温で大きく変わる。
また出来がよくても時間が経過すると分離していく。
時間と温度と調合がすべて一致して本番の舞台上でもっとも効果を発揮するように徹夜で
研究を重ねていた。
大変だっただろうけど、たぶん面白い作業だったと思う。

そのスライム、観ている観客も面白かったと思うが、一方演じている方にとっても効果的
だったのではないかと思う。
死んだ役者は死んでいるという演技(?)にその気になれたと思うし、殺す側専門の僕も
相手の役者をスライムまみれにすることで、「そそられる」感じがあった。
人を殺すことの快感みたいな感情を捉える上で、スライムの質感が生理感覚にうったえる
ものがとても役に立ったように思う。
なるほど装置が演技の内面を考える上でのヒントになることもあるのかと思った。

その後、「タイタス」の再演でスライムを使うことはなくなって残念ではあるのだが、
シンプルになった演出の中で、なんとかしてスライムに匹敵する印象を舞台上に残していかないと
いけないと思う。
「四畳半」にもっともっと観客に伝える生理感覚を盛り込んでいかないといけないんだろうな。

僕は亡霊のように歩く役者を観ながら、今でもスライム状の液体が腕から垂れている様子を想像している。
自分が殺す場面でも思いっきりスライムをぶっかけてやろうと思う。

山本芳郎

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