11/05/25

傾城反魂香/ルーマニア

フォース

山の手事情社の独特な動きである「四畳半」は、
登場人物の機微を全身で表現するわけです。
「その手は本当にそれでいいの?」
「腰は? 顔は?」
「声の出し方はそれでいいの?」
演出家安田は役者の一挙一動を細かく指摘します。
そして、繰り返しこう話すのです。

「登場人物の感情のマグマに触れているの?」

複雑な背景の中でたまたま人は出会い、別れる。
その一瞬を舞台に表出させる為には、
内面、身体、声、全てを総動員しなければならない。
登場人物たちの魂を、全身で、感じること、発すること。
その意識の交換が舞台で行われていて、
さらに見ている観客と繋がって初めて『傾城反魂香』は浮かび上がって来る…。

ふと気づいたのですが、
それって「フォース」のことじゃなかろうかと。
映画『スター・ウォーズ』にでてくるあれです。
未来を予知したり、触れずに物を動かしたり、
視覚に頼らず周囲を感知したり、意志を相手と送受信したりする、
あらゆる物質のエネルギー帯の総称です。
詳しくはウィキペディアをググって下さい。
あるいは漫画『ワンピース』で麦わらの主人公が最近身につけた、覇気とかいうやつも似たようなものでしょうか。
うちらはその「フォース」を大真面目に体得しようとしてるんじゃなかろうかと。

えらいもんに手出したなぁ…。

今更ながら、びっくりしたりして。
でも舞台に限らず、
優れた芸術作品ってそういうことのような気がするのです。

しかし、繊細で莫大、言葉ではなかなか説明出来ない概念を「フォース」と表現した、ルーカス、すげえな、やっぱ…。

というわけで我々は、
平成の「ジェダイの騎士」になるべく日々奮闘しているわけであります。

ルーマニア人の「フォース」を感じながら。

岩淵吉能

11/05/24

傾城反魂香/ルーマニア

山の手事情社の風景

山の手事情社の《ルパム》と呼ばれる踊りは、
何度みても面白いと、身内ながらそう思います。
まるで台詞のない物語、飛び出す絵画です。

本番まであと少し、現在稽古場は森下スタジオへと移り、
《ルパム》も細かいところまで合わせております。
役者たちで作った動きをみて
安田さんが動作や感情を誰にどう合わすのか指摘し、
一声、

「ではもう一度お願いします」

ところが、あーしよう、こーしようと、
役者同士で話し合いが勃発していました。
安田さんは黙って様子をうかがいます。
頃合いを見計らう安田さん。
早く話しにケリをつけようとして終わらない役者たち。
安田さんのメガネは舞台をみつめています。

いつ動く、いつ動く、どちらが・・・。

ついに動く安田さん。

「はじめるよ」

声は舞台に響く。
そして、不発。役者たちの話しにケリはつかず。
安田さんは次の機会を狙います。

それぞれが作品をよいものとするため、
話し合うべきことは話し、わかろうとします。
そうしてあーだ、こーだと、役者たちは意見をすり合わせていくのです。
ルパムの精度がよければよほど作品の質もあがるというもの。

ところで黙していた安田さんが動きます。
三度目の正直。

「いくよ」

安田さんの言葉数がだんだんと少なくなっています。
役者たちは一言二言話し、今度は準備につきました。

山の手事情社で見かける光景です。

石原石子

11/05/21

傾城反魂香/ルーマニア

深く深く

どうも、川村です。
いつもは稽古場まで自転車で通っていますが、
只今ちょっと離れた貸スタジオでの稽古なので電車通勤しています。

いつもの見慣れた景色と違ってこれがまた新鮮。
最寄駅まで歩き、
(普段歩かない事に気付く)
運賃を払い、
(日本経済に貢献)
老若男女と同じ車両に乗り、
(他人の人生模様を勝手に想像)
そして私服の俺。
(いつもは稽古着)

あぁ社会人と同乗していると俺も社会の歯車になれた気がする…。(勘違い)

まぁその内慣れるでしょうが、何かに夢中の時(今は演劇)は社会との関わりが薄くなりがちです。

演劇は、
「何故今この作品をやるのか」
「この作品で何を語りたいのか」
が問われます。
というかこれが無いと稽古しててキツイです。
ただのエンタメで終わってしまいますから。

ルーマニアに行く事で多くの人に観てもらいたいのは勿論ですが、今を生きる日本人が何を伝えられるかが大事だと感じています。

残り少ない稽古日ですが、
まだまだ作品が深くなる余地ありです。

川村 岳

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