11/06/09

傾城反魂香/ルーマニア

ブカレスト2日目

シビウ、トゥルダと2都市を経て、
「フィエル・デ・カルカッタ!(アイロン)」
「オグリンダ!(鏡)」
「マサ!(机)」
「ベンティラトール!(扇風機)」
「ウメラス!(ハンガー)」
という極めて少ない単語を駆使し、衣装&舞台裏作りを乗り切っている安部です。後は日本語で言っても何となく伝わるから不思議〜。

昨日、トゥルダを出発し、長時間のバス移動を経てようやく首都ブカレストに到着。
ブカレストは新宿や池袋に似ていて都会だ。夕方になるとそこいらに寝っころがっている人がいてびっくりする。

今日一日はルーマニア最後の自由行動の日、ということで何人かで美術館で現代アートをお見て、チャウシェスクの建てた国民の館を通りすがり、お土産でも買います。

朝10時30分に出発し、タクシーで現代美術館へ。
タクシー2台に分かれて乗車した所、前のタクシーは9レイなのに後ろのタクシーは15レイ。ぼったくられた?
美術館は学生とアーティストは無料ということで、只で見物。なかなか良い作品が多く、とても満足。
帰り道は徒歩移動。
すごい突風が吹いたかと思うと嵐のような雨が降りだし、おまけに迷子。
穂高さんか気合の英語で何とかカフェを見つけてくださり避難成功。
ルーマニアは急な雨が多く、しかもすぐ止む。午後はまた日差しが戻り、テクテク歩いて「カルフール」という大型スーパーに移動。
思い思いお買い物をしてホテルに戻る。

夜は山の手事情社が公演する劇場”テアトルオデオン”で観劇。オデオン座のレパートリーの「マルキ・ド・サド」を観た。

ふ〜〜。よく動いた。
明日はいよいよ仕込みです。

安部みはる

11/06/08

傾城反魂香/ルーマニア

バスに揺られて

いよいよ最後の都市 ブカレストへ移動する。
トゥルダからブカレストまではバスで10時間、遠い。
チャーターしたバスは驚くほど小さく、岩淵さんが後ろの荷台にトランクと舞台美術をテトリスのように積み込んでくれようやく出発することが出来た。
安田さんと谷くんは、大事なプロジェクターのスペース確保のため、別便でブカレストへ向かう。

のどかな牧草風景が続く。ハイジでも出てきそうだ。
きれいだと思っていたが、もともと森だったところを切り開いて小麦畑にした跡らしく100年後には土地が痩せ砂漠化してしまうと聞き少し胸が痛む。
時々思い出したように小さな集落が出てくる。
このあたりはコウノトリが来るらしく、煙突や電信柱の上に巣を作っており、実際に鳥も見ることが出来た。
その巣の形があまりにもかわいいので、写真撮ろうと必死に探していたら、文くんに「そんなに子宝に恵まれたいのですか」と言われた。違う違う。


ドラキュラ城のあるシギショアラという街でお昼休憩をする。
この街は、おそらく唯一日本人が観光しに来るであろう場所だ。早速日本人ツアーリストに出会う。
何だろう、少しげんなり。
この人達は、シビウ演劇祭もましてその演劇祭に三年連続で公演している日本の劇団がいることも知らないだろう。
入ったレストランはさすが観光地なだけあって、料理の値段がかなり高い。「ドラキュラスープ」というオリジナルメニューを頼んだら、トマトスープにそうめんみたいな麺がぷかぷか浮いている不思議な代物が出てきた。ほかにもいくつか頼んだが、味はいまいち。昨日トゥルダで食べた手作りのサルマ−レ(ルーマニアの料理、ロールキャベツのようなもの)が恋しい。

まだまだ牧草風景は続く。
バスの乗り心地は悪く、何人か車酔いした。
酔い止めの薬を買おうとしたら店員が気を利かせてくれて、10粒だけばら売りしてくれた。
そんな良心的な売り方をしてくれるなら、もう少し笑顔も欲しい。
特にカフェの若いウェイトレスは無愛想すぎる。
可愛い顔しながらとてつもなく冷たいのだ。
少しは微笑んでくれ。

さすがに足のしびれも限界に達し、狭い座席の上で体育座りの体勢を取っているうちに、ブカレストに着いた。
チャウシェスク政権時代に建てた馬鹿でかい建物が目に付く。
ほかの建物とのギャップが凄まじい。

さあ、いよいよラストスパートだ。
今夜はウルスス(ビール)でも飲んで気合を入れよう。

三井穂高

11/06/07

傾城反魂香/ルーマニア

トゥルダ公演の報告です。

安田です。
6月7日(火)の夜、トゥルダでの公演がありました。
シビウに続く公演になります。
5日の夜から仕込むことができたので、じっくり準備できました。

難があったとすれば、古い劇場で照明用のケーブルコードがなく、新たに作ってもら分ければならなかったこと。
稽古場の気温が高く、クーラーもない中、汗だくだくで稽古したことくらいでしょうか。

シビウ国際演劇祭のフェスティバル・ディレクターのキリアック氏が昨年、一昨年のようにスタンディングオベーションがなかったことについて、「2階席は総立ちだったよ。1階の客は衝撃的すぎて立てなかったんじゃないのか?」と言っていて、半信半疑だったのですが、トゥルダでの公演を経て、そうだったのかもしれない、と思うようになりました。

6日には、市庁舎の議会場で記者会見。
1時間を超えるものでした。
よくこんなに芝居のことで話し合えるなというのが正直なところ。
http://www.youtube.com/watch?v=Ae--kjLoo0U&feature=related
さて、当日。
11:00からゲネプロをおこない、最後の調整をします。
ラドゥ・スタンカ劇場が一度やったとは言え、劇場のサイズも袖の位置も違うので、俳優やスタッフにとっては、重要な稽古です。

休憩を取って、19:00開演。
人口7万人の小都市、トゥルダ。
市長は大学時代に演劇活動をしていたとかで、劇場には予算も出す代わり、口も出すそうです。
4列目に市長の終身専用席があると聞きました。
その市長も観劇するとのこと。
彼は19:00ならその時間ぴったりに始まらないと、怒りだすといいます。

18:30に開場したものの、400席の会場はなかなか埋まりません。
「満席になるよ」とここでも聞かされていましたが、5分前になっても3、4割程度です。
10分前には市長も家族でやってきました。
外は19:00だというのに、日中にように明るい。
(日没は21:00過ぎです)
19:00過ぎからどんどんお客さんが入ってきて、満員になりました。
19:10開演。
市長は怒らなかったようです。

始まった瞬間、衝撃が走りました。
字幕の映像がずれていて、観客に読めない!

字幕を出すプロジェクターを客席に設置せねばならず、満員のお客さんが入場時に台に触れてしまったようです。
1ミリずれただけでも、映像になると数10センチのずれになってしまう。
永里子さんがカバーし、字幕がちゃんと見えるようになると、客席にほっとした声が漏れます。

日本人が公演するのは町の歴史上初めてということもあるでしょう。
しかし、この日の客席の興奮は私から見ても異常でした。
オープニング《ルパム》(ダンスシーン)が終わった瞬間、拍手が沸き起こり、次のシーンの岩淵さんのセリフが中断しました。

クライマックスのシーンでは、主人公のみやが、恋人の元信と別れてしまうのですが、そこが終わると、大拍手が起こり、一瞬ブーイングなのでは、と疑ったほどでした。
しかし、このシーンがクライマックスだと理解しているのだとわかり、ああ、ちゃんとついてきているんだ、それにしてもオペラやバレエのような反応です。
これならガラ公演ができるのでは。

2人が熊野詣でをするシーンの《ルパム》でも、大きな拍手が沸き起こりました。
こちらが望んでいた以上の反応です。
ラストシーンでは拍手が大きすぎて、俳優が曲の終わりを聞きとれず、きっかけが取れないほどでした。
http://www.youtube.com/watch?v=9-2-mxZvodE&feature=player_embedded#at=109
近松門左衛門、いけます。

安田雅弘

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