11/06/27

傾城反魂香/ルーマニア

ルーマニアの人たち

今回のルーマニアツアーは僕にとって人生初の海外でもあり、とても刺激的な2週間でした。

最初に訪れたシビウ。国際演劇祭ということで、山の手事情社には3人のボランティアスタッフが付いてくれました。その内のひとりでルーマニア人の「チュプリアン」通称「チュピ」っていうナイスガイがいたんですが、この男、パッと見僕に似ているんです。
んで、もうひとりルーマニア人のスタッフがいて、「アーダ」っていう可愛い女の子なんですが、この「アーダ」が僕を「チュピ」と一回間違えたらしい。
「へへんっ! ルーマニア人にルーマニア人と間違えられたゼっ! 紛れもなく僕はナイスガイっつーことだっ、これはっ!!」と鼻高々に思う反面、適当に人を見てるんじゃないか、ルーマニア人、とも思いました。

次に訪れたのはトゥルダ。ここでの公演は印象的で、とにかくお客さんの反応がダイナミックでした。まず開演前の雰囲気がもう日本と違って、みんなワクワクしているというか、同窓会に来ているような、今日のこの場を楽しんでやろうという感じがビシビシ伝わってきました。
そして上演中の熱狂的な反応。「回し者かっ!? お前らはっ!」と思う程でした。
トゥルダはド田舎で何もないから、演劇が数少ない楽しみのひとつなんでしょう。

そんなトゥルダですが、日本のシティボーイのこの僕を驚かせたものがありました。「岩塩」の採掘場跡地です。
何年も前に塩を掘り取っていた場所で、洞窟みたいになっているところなんですが、地下400メートル位のところに東京ドーム弱くらいの空洞が広がってるんです。
それだけでもスゴいんですが、さらにそこに観覧車(小さい)やらボーリング場(2レーンのみ)やらパターゴルフ場やらがあるから驚いた!
驚いたというよりは「誰がこんな地下400メートルにまで来てそんなことするんだバータレ!!」って言いたくなるような無駄な施設がいっぱいあって、くだらなっ!! と思った。

そして最後に訪れた首都ブカレスト。
街を歩いてるとちょっと太った女性が「元気ですか?」と声をかけてきました。日本語が少しできるらしい。そこで、「明日オデオン劇場で芝居やるから是非」って宣伝。
その後今度は若い男子が「こんにちは!」と僕に声をかけてきました。
風俗の客引きでした。
「日本人はみんな金を持ってると思うなバカ!!」と心の中で叫びつつ、丁重に断りました。

ルーマニアの人たちは大体ダイナミックで適当だ。日本人からしたらもうちょっと繊細に考えようよ、と批判したくなるところがあるが、日本人よりは人間らしい感じがし、羨ましく思いました。

では、今冬のアサヒアートスクエアでの公演でお会いしましょう。


谷洋介

11/06/27

傾城反魂香/ルーマニア

おせっかいなやさしさがしみる国

私は今猛烈に反省している。
私はやさしさの足りない女でございます。
反省・・・。

それはルーマニアツアー2都市目の、トゥルダでのこと。
この町は、シビウよりはるかに英語が通じず、劇団スタッフも何人か帰国してしまったため、楽屋周りのことは「一人でやらなきゃ!」と緊張していた。
この劇場の楽屋係りはマリチカさんというおばさま。
ルーマニアのおっかさん、といった感じ。
アイロンとアイロン台をせっせと運んでくれたり、ハンガーを持ってきてくれたり、どこからともなく延長コードを出してきてくれた。
掃除をしようものなら、掃除機をひったくって掃除をし、雑巾をかけようものなら「わたしらがやる」と止めに入る。
それ以後マリチカさん(他のスタッフさんも)の目を盗まないと掃除が出来ないほどの勢い。
あとで聞いたところによると、劇場のスタッフさんにはそれぞれ役割があり、その人の仕事は他の人がやってはいけないらしい。

そんな中、衣装を乾かすのに扇風機を借りようと思い、近くにいたスタッフさんに「ベンティラトール?(扇風機)」と聞いたが全く通じない。
マリチカさんも駆けつけ、「なに?何が聞きたいの?」「えぇと〜」とまごまごしていたら、
やり取りをしっかり見ていた舞台監督の本さんが、あっという間に「扇風機はない」ということを聞いてくれる。
そこでどういうわけか、マリチカさんに思いきり抱きしめられた。
「ん? なんで?」
たぶん、私が舞台監督に怒られていると思ったんでしょうか。
しかも、日本人は若く見られがちなので私が大分若く見られていた可能性もある。
マリチカさんの勢いに押され、私もなぜか涙ぐむ。
きっと、「大丈夫よ、人生に失敗はつき物。」なんてことを言ってくれていたに違いない。
勘違いとはいえ、異国の地で人のやさしさと人生の深みを感じた出来事だった。
まずは、人にやさしく。
お別れの時に交わしたルーマニア式挨拶(ほっぺをくっつける)でのマリチカさんの柔らかいほっぺを思い出すたびに、自分のすぐ怒る性格を反省しようと思う。

安部みはる

11/06/24

傾城反魂香/ルーマニア

3度目の渡航、3回の動揺

年々ハードルが高くなっている気がする。
そして年々緊張感が増している気がする。
3度目のルーマニア渡航。いざ。


1都市目 シビウ
3年連続ということもあり、基本マップ無しでも歩けるようになり、
行き交う小学生の物珍しげな目線にもなれ、
声枯れもなく望んだ本番。
ゲネプロが終わって休む間もなく客入れ。
お客さんが入る事で劇場の空気が変わる変わる。
熱気が舞台裏まで伝わってくる。
何とも言えぬプレッシャー。
これがシビウ国際演劇際。
これがラドゥスタンカ劇場。
集中力と戦いながら舞台へ。
元信を姫が騙し、落とすところでかすかな反応。
観てる観てる!
しかし、その後舞台上に出ると、
どう受け止めていいのか分からない空気みたいなものが観客を包んでいる。
静か、、、大丈夫か?
おそらく出ているメンバー全員が最後まで反応を読み取れなかったのでは。
今度は姫がみやに自分の夫(元信)を貸し出すシーンでまた笑いが、、、
何故?
私変な事言った?
え、ここ感動的なシーンじゃなかった?
あれ?
動揺を隠しつつ(隠しきれていなかったかもしれないが)終演。

2都市目 トゥルダ
朝は甲高く鳴く鶏に起こされ、
猫のやウサギのいるレストランで食事をし、
親切な人々に恵まれた町。
ここでもハプニングが。
上演中
オープニングルパムが終わると拍手。
元信とみやのクライマックスで拍手。
熊野詣ルパムで拍手。
芝居中にこんなに観客が反応をみせるなんて日本ではありえない。
動揺のなか終演。


3都市目 ブカレスト
二年前に訪れたルーマニアの東京。
まず、排気ガスくささにブーイング。
トゥルダの鶏が恋しい。
しかし劇場の設備の良さには羨ましさを感じる。
天井のあく客席、趣のあるロビー、声のよく響く稽古場。
そして歴史を感じる建物。
ここでもハプニング。
上演中はシビウ同様静か、、、。
名古屋山三という浪人が刀をやむなく売りに出すシーンでのこと。
ゴーッ

冷房?
ゴーッザーッ
その音は次第に大きくなり、客席動揺。
どうやら連日ブカレストを襲っていたスコールが突然降り出した模様。
古い建物だけに劇場を打つ雨の音が半端なかったのであります。
袖に戻ってきた名古屋役の浦さん渋い顔。
動揺の中終演。

日本の戯曲を上演するも初めて、観るのも初めて。
初めて同士のぶつかり合い。
双方戸惑いながら、たどたどしくも、歩み寄れた気がします。
舞台ならではの味わい深い経験が出来た公演でした。

気性の違いや文化の違いはあれど、演劇はそれを乗り越えて理解しあえるものなんだなと。
四畳半だろうが、リアリズムだろうが、内側で起こすものは常に即興。
次なる課題も見え、充実した時間となりました。

植田麻里絵


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