12/10/15

トロイラスとクレシダ

一番楽しくて一番苦しい時期

ルーマニアの俳優たちが舞台上で《四畳半》で動いているところを見て、これは面白い手法なのだと改めて思った。

それは、まるで子供向けの絵本のような絵面に、複雑かつ過剰な大人の内面が詰まっている。それは美しく、シンプルなのに複雑で、見るものの想像力を刺激する。(もちろん、これは内実が伴わない場合すぐに子供だましの幼稚なものに変貌してしまう危険と隣り合わせであるのだが!)
この様式で何年もやっているのに今頃このことに気づくというのも皮肉な話であるが、ルーマニアの俳優がやることによって《四畳半》というものを客観的に見ることが出来たのだろう。

さて、翻って、ただいま鋭意創作中の元祖《四畳半》である。劇中の人物は簡単には私を近づけてはくれない。考える。頭で、身体で。久しぶりの《四畳半》は私の筋肉に能力不足を伝えてくる。思考が停止しかける。ああ、ルーマニアの俳優に投げかけていた言葉がすべて自分に跳ね返ってくる。

マイ ジョス!(もっと重心を下げて)
マイ クシムチ!(もっと丁寧に)
マイ ターレ!(もっと強く)

私達は総力を挙げて大人向けの優れた、そしてシズル感に溢れる絵本を作らねばならない。
とにかくより良いものに向けて仮定と実験を繰り返すのみである。それは、きっと公演が始まっても繰り返されるだろう。だが、ああ、足腰が・・・痛い・・・。


倉品淳子

12/10/13

トロイラスとクレシダ

とりあえずやってみよう

今回の「トロイラスとクレシダ」の中で、トロイ軍の武将たちが戦場から凱旋してくるシーンがあります。
先日の稽古でこの凱旋シーンをどう表現するか、これを役者たちで話し合いました。

ふつうこういうのは演出家がああしてこうしてと決めていくものですが、山の手事情社ではほとんど役者が考えていきます。

「こういうのはどうだ」と誰かが提案し、「じゃあやってみよう」とみんなで体を動かす。これを繰り返しながらシーンを作っていきます。
ひとつ出来ると、「じゃあこれはどうだ」と、どんどんアイデアが膨らんでいく。
こうなると稽古が盛り上がる。結局このとき出来上がったのが、小1時間ほどで10数パターン!

いいものもあれば、「これは絶対に使えないでしょ」というのもあります。しかし提案が出た時点で「くだらない!」とみんなが思っても「とりあえずやってみよう」と実際に体を動かすことでわかってくることがあるのです。「あーやっぱりダメだね」とか「意外といいんじゃない」とか。

とにかく話し合いであーだこーだするより、「よしじゃあやってみよう」と実際に行動したほうがすんなりいくもんです。

まあでもこれ小1時間が限度で、3時間、4時間やるとさすがにどうでもよくなってくる。

「トロイラスとクレシダ」の舞台であるトロイ戦争はいわばこれの拡大版じゃないのか。
別に小難しい話ではない。敵軍に勝つための作戦を練る。練ってやってみては失敗し、を繰り返して7年。そりゃだらける。もはやわざと失敗するような作戦を立ててるんじゃないかとも思えてくる。

しかし戦況を左右するのは、頭を使って練りに練った作戦ではなく、色恋沙汰。ここがいかにも人間ぽくて面白いところ。

ま、そういう話です。
さて、凱旋シーンがどうなったか、それは本番で!


谷洋介

12/10/10

トロイラスとクレシダ

ヘレンのこと

ハリウッドスターといわれるような美男美女たちの私生活なんて遠い世界に感じるけど、ヘレンという女性の素性はそれ以上に遠く、謎に包まれている。

ヘレンは『トロイラスとクレシダ』の登場人物のひとりで、トロイ戦争の原因にもなった絶世の美女。
もともとはギリシアの将軍メネラオスの奥さんだったのに、パリスと恋に落ちてトロイにきちゃったもんだから大変なことになってしまった。

いやしかし、戦争の原因になっちゃうなんて、
どんな女性なのでしょうか…!

シェイクスピアの原作には書かれていないけど、ギリシア神話の世界では、父親は全能の神ゼウスらしい。
つまりヘレンは半分神様だそうな。
あまりに求婚者が多かったので話し合いで結婚相手が決まり、万が一ヘレンが誰かに奪われるようなことがあったら、ギリシア中が一致団結して取り返しにいくという約束があったらしい。
さらに戦争の後(パリスは戦死)はメネラオスの元に戻って平和に暮らしたそうな。

えー!
ここまでやらかして元鞘ですか…!!

さすがに周囲の評判は悪い。
トロイ人からは稀代の悪女よばわり。
仲間であるはずのギリシア人にまで「腐れ肉」扱いされている一方で、ヘレン自身の台詞は少ないし、ほとんど自己主張がないのでいまいち内面というか、キャラクターが見えてこない人物、ヘレン。

何か月か前にあった事件をふと思い出した。
ある男が同じマンションに住む小学生の女の子を自分の部屋に連れ込み、その気まずさから同居する父親を殺してしまったらしい。
男に何が…すごく複雑な背景があるのだろうけれど、その女の子がどんな子だったのかすごく気になる。

男性の衝動を駆りたてる女性ってどんな人なんだろう?
日々何を考えて過ごしているのだろうか。

んーヘレン。
絶世の美女の実態とは?

映画に出てくるヘレンはたいてい美人でセクシーな女優さんが演じている。
しかしうちにはマリリン・モンローもグレース・ケリーもいない…。

今回どうなる?

ほんとにヘレンは出てくるのでしょうか…!

お楽しみに。

越谷真美