12/10/10

トロイラスとクレシダ

熱い、暑い、秋

今年、入団して10年目になるんです。
ひょんなことから演劇に関わりはじめて、東京に出てくるまで、演劇を見ることなんてほとんどなくて、見始めたときは何を感じて良いのか、はっきり言って分かりませんでしたよ。
長時間座って観る習慣なんてないし、古典作品あらすじ分かんないし、俳優さんってたくさんのセリフ覚えてすごいよね、ってちっぽけな感想でした。
でも、だんだん観に行くうち、お金払って観ているのにそんな感想?! 自分が悲しくなってきましてね、何見せたいのか知らないけど、自分なりに面白さを感じ取ろうって思いはじめたんです。

古典作品の役って、かなりエネルギッシュな人たちが多いんですよね。
それを舞台上で表現しようと戦う俳優に私はうっとりするようです。
まぁ、私は熱く、勢いのあるものに興奮する質なんです。
なのでスポーツ、特に野球が大好きなんですけどね、赤いチームが。
どんな状況が訪れようとも、外見気にせず必死でくらいついて行く姿がフェチポイントなんですよね。
ただ、演劇はその勇姿と作品の解釈も一体にならないと、見てもらえるものにならないという、何とも困難な仕掛けがあるんです。

本番まであと数週間。どうする?!
お客様は仕掛けなんて見たくないし、言い訳なんて通らない。
トロイ戦争に負けないくらいの長さで、山の手事情社の稽古場は戦場と化しています。
山の手事情社戦争の幕引きはまだまだ先ですが、まずは『トロイラスとクレシダ』の仕掛けをどう解いたかは、ご自身の目でお楽しみください。

お待ちしています。


福冨はつみ

12/10/08

トロイラスとクレシダ

おんな

ここ数日、女性たちのショート・シーンのネタだしやら、シーン作り、他でも、女だけでギリシャ兵やトロイ兵というものを表現するために歩行を考えたりと、女だけの中で、「女」や「集団」について考える日々が続いております。

女だけの中って聞くと、人によっては、ねちっこいイメージをお持ちかもしれませんが、しかし、そこは山の手事情社の女優達です。
クリエイティブな現場では、シーンで男達をあざけり笑うがために、真剣に下ネタが行き交いされています。
ただ、ただ純粋に、あーでもないこーでもないと、真剣に下ネタに理論づけしていきます。
感性というのは「感情」と「理性」でできているんでしょうか? 討論は絶えません。

まぁ、それを含め、私は改めて「女」って、変だなぁーと思います。

何故改めてかというと、実は中学、高校と女子校に通い、さらに大学も八割が女性の学科に入って、女の中での生活を10年間したという経験があるのです。
しかも、全然、うんざりした事がないんです。

それでも、今まで感じていた女の集団が、「あ、本当に一部分だったんだなぁ」と、今回のシーン作りを通して感じて、「もっと見ときゃーよかったなぁ・・・」と、反省するくらい、改める感覚がありました。
それは、女が社会(集団)に生きていくって、どこかの回路が麻痺していってしまうんだなと、感じたからです。
元から、人間って生き物は不確かで不安定な生き物なのだと思いますが、そこに、
恋愛、性(SEX)、母性、女性性、本能、理性、ホルモン、嫉妬、見栄、感情、喜怒哀楽・・・etc.
様々な要素が、女性を適応へと変容させていっていると、個人的に感じました。

しかも、今回の作品にいたっては戦争中。
フェミニズムでもウーマンリブを必ずしも取り扱った作品ではありませんが、通常の生活とは違うわけです。
どこかのん気で、どこか狂気が含まれ、アンバランスの拮抗を保つ女。
そんな中、ギリシャとトロイの男達、そして、「トロイラスとクレシダ」という作品で、どう生かされて行くのか・・・?

こうご期待です!
池袋でお待ちしております。

中川佐織

12/10/05

トロイラスとクレシダ

終わりのない話

この作品ではトロイとギリシアが戦争している。

私はトロイ側。

トロイの領土に降り立った敵。
海岸いっぱいに建てられた敵の陣営。

もしかしたらトロイの女たちはもう何年も海で貝殻を拾ったり、泳いだりしていないのかもしれない。

トロイの城壁の中に閉じ込められている事に我慢できず、こっそり抜け出したのを敵に見つかり犯されたかもしれない。
朝送り出した愛する人が、永遠に帰って来ないかもしれない。
その男たちが変わり果てた姿で帰ってきたのを見た時、戦いと言う本当の敵を呪いながら女は泣くのだろう。
それでも戦争は終わらない。
何故なら男どもが戦い続けるから。
段々と長い時間をかけて、憎むべき戦争が日常へと変わり、心の中に蟠った哀しい想いが行き場を失くしていく。
それはどこに向かうのか。
男どもは手っ取り早い捌け口として目の前で起こっている戦争を利用する。
だから、終わらない。
女が戦争に、それでもやめない男たちに疲れ果てた頃、物語は始まる。

トロイ戦争を嘆く、恋する王子トロイラス。
念願叶った愛するクレシダとの甘い時間、突然の辛い別れ。
そしてこの物語は何とも中途半端に終わる。
初めて本を読んだ時、なんかスッキリしない話だ!と思った。誰も幸せになっていないし、大きな変化もないぞ!!と。
でも、実は私たちの生活でも、そうなんだな。
天に召されるまで物事に終わりはなく、ほとんど中途半端な状態で次から次へと流れていく。
国の情勢なんて、戦争なんて特にそう。
一兵士が死んだところで何も変わらない。
女が一人泣き叫んだところで、戦争は終わらない。

そうやって何度も何度も歴史は繰り返し続いていく。
 
…なんかざっくり大きくまとめてしまいました。
シェイクスピア作品の中でも、問題作と呼ばれる『トロイラスとクレシダ』。
何とかして皆様に楽しんでいただけるように一所懸命、試行錯誤しております。
でもどうぞ皆様の視点で結構です。この物語を自由に楽しんでください。

原作でも序詞役がこう申します。
「お気に召すも召さぬも皆様のお心次第」と。
 
それでは劇場でお会いできるのを楽しみにしております。
両手いっぱいの愛を込めて。
 

園田恵